フリーランスや個人事業主として仕事をしていると、報酬から「源泉徴収税」が天引きされて入金されることがあります。「請求した金額より少なく振り込まれている」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
源泉徴収は所得税の前払い制度のひとつで、正しく処理しないと確定申告で還付を受け損ねたり、帳簿が合わなくなったりする原因になります。
この記事では、源泉徴収の仕組みから会計ソフトでの仕訳方法、確定申告で取り戻す手順までをわかりやすく解説します。

🐧 ナビ助のおすすめ!
源泉徴収とは?個人事業主に関係する仕組み
源泉徴収とは、報酬を支払う側が、支払い時に所得税を天引きして税務署に納める制度です。報酬を受け取る側(フリーランス・個人事業主)から見ると、手取りが減る代わりに、確定申告時に税額が精算されます。
源泉徴収の対象となる報酬
すべての報酬に源泉徴収が必要なわけではありません。所得税法で定められた特定の報酬に対してのみ、源泉徴収が義務付けられています(国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等」)。
個人事業主に関係の深い源泉徴収対象の報酬:
- 原稿料・講演料
- デザイン料・イラスト料
- 翻訳料・通訳料
- 弁護士・税理士・公認会計士・社労士などの士業への報酬
- コンサルティング料(企業診断員の業務に関する報酬として該当する場合)
- プロスポーツ選手・芸能人の出演料
一方で、プログラミングやWebサイト制作、動画編集などの報酬は、原則として源泉徴収の対象外です。ただし、これらにデザイン料が含まれる場合は源泉徴収の対象になることがあるため、契約内容に応じた判断が必要です。
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収税額は、報酬の金額によって計算方法が異なります。
- 100万円以下:報酬額 × 10.21%
- 100万円超:(報酬額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円
たとえば、50万円の原稿料に対する源泉徴収税額は「50万円 × 10.21% = 51,050円」です。手取りは448,950円となります。
会計ソフトでの仕訳方法
源泉徴収された報酬を受け取った場合の仕訳方法を、具体例で見ていきます。
売上計上時の仕訳(請求書発行時)
10万円の原稿料を請求した場合、源泉徴収税額は10,210円です。
【仕訳例:売上計上時】
- (借方)売掛金 100,000円 /(貸方)売上高 100,000円
入金時の仕訳(源泉徴収税が天引きされて入金)
【仕訳例:入金時】
- (借方)普通預金 89,790円 /(貸方)売掛金 100,000円
- (借方)事業主貸 10,210円
源泉徴収税額は「事業主貸」で処理するのがポイントです。源泉徴収税は事業の経費ではなく、事業主個人の所得税の前払いだからです。

会計ソフト別の操作のコツ
freeeの場合
freeeでは、取引登録画面で「源泉徴収税」を自動計算する機能があります。売上の取引を登録する際に「源泉徴収税を自動計算する」にチェックを入れると、税額が自動で計算され、事業主貸への仕訳も自動で行われます。
マネーフォワードの場合
マネーフォワードでは、仕訳入力時に「事業主貸」の補助科目として「源泉徴収税」を設定しておくと管理しやすくなります。確定申告時に源泉徴収税の年間合計をすぐに集計できるため、申告書への転記がスムーズです。
弥生の場合
弥生会計では、振替伝票で入金仕訳を登録する際に、源泉徴収税額を「事業主貸」で計上します。「摘要」欄に取引先名と「源泉徴収税」と記載しておくと、後から検索しやすくなります。
確定申告で源泉徴収税を精算する方法
源泉徴収された税額は、確定申告で「前払い分」として精算されます。年間の所得税額が源泉徴収された合計額よりも少なければ、差額が還付されます。
確定申告書への記入方法
確定申告書の第一表「50番:源泉徴収税額」の欄に、年間に源泉徴収された税額の合計を記入します。freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトで確定申告書を作成する場合、「事業主貸」の源泉徴収税の補助科目を集計して自動で反映させることができます。
支払調書との照合
取引先から「支払調書」が送られてくる場合は、そこに記載された源泉徴収税額と自分の帳簿の金額が一致しているかを確認しましょう。ただし、支払調書は取引先が税務署に提出するものであり、個人事業主に送付する法的義務はありません。送られてこない場合は、自分の帳簿と請求書・入金記録から源泉徴収税額を算出する必要があります。
支払調書が届かないケースは珍しくありません。「支払調書が届かないから確定申告に記載しない」のはNGです。自分の帳簿をもとに源泉徴収税額を正しく計算して申告しましょう。
源泉徴収の管理で気をつけたいポイント
1. 請求書に源泉徴収税額を明記する
請求書を発行する際に、源泉徴収税額を明記しておくと、取引先とのトラブルを防げます。請求額・源泉徴収税額・差引支払額を明記した請求書のテンプレートを作っておくと便利です。
2. 補助科目を設定して年間合計を把握しやすくする
「事業主貸」の中に源泉徴収税と個人的な引き出しが混在すると、確定申告時に集計が大変です。「事業主貸 − 源泉徴収税」のように補助科目を設定しておくと、年間合計をすぐに確認できます。
3. 取引先ごとに金額を記録する
複数の取引先から源泉徴収された報酬を受け取っている場合は、取引先ごとの源泉徴収税額を記録しておきましょう。確定申告書の第二表に支払者ごとの内訳を記載する欄があります。

🐧 ナビ助のおすすめ!
よくある質問
Q. 源泉徴収されなかった場合はどうする?
源泉徴収すべき報酬なのに天引きされていなかった場合、確定申告で源泉徴収税額として計上することはできません。その場合は報酬全額が所得として計算され、所得税を自分で納付する形になります。気になる場合は、取引先に源泉徴収の有無を確認しましょう。
Q. 還付金はいつ振り込まれる?
e-Taxで確定申告を行った場合、通常3週間〜1か月程度で指定の銀行口座に還付金が振り込まれます。書面で提出した場合は1〜2か月程度かかることがあります。
Q. 消費税とインボイスの関係は?
インボイス登録事業者の場合、請求書には消費税額を明記する必要がありますが、源泉徴収税額の計算は消費税込みの金額で行う場合と、税抜きの金額で行う場合があります。請求書に消費税額が明確に区分されている場合は、税抜き金額を基準に源泉徴収税額を計算できます(国税庁「源泉徴収と消費税」)。
源泉徴収と消費税の同時処理の実務
インボイス制度の導入により、請求書に消費税額を明記するケースが増えています。源泉徴収税額と消費税を同時に処理する場合の実務的なポイントを押さえておきましょう。
請求書の書き方と税額計算の順序
たとえば、税抜10万円の原稿料を請求する場合の計算は以下の通りです。
- 原稿料(税抜):100,000円
- 消費税(10%):10,000円
- 源泉徴収税額(税抜金額に対して):100,000円 × 10.21% = 10,210円
- 差引支払額:100,000円 + 10,000円 − 10,210円 = 99,790円
請求書に消費税額が明確に区分されている場合は、税抜金額をもとに源泉徴収税額を計算できるため、手取りが増えます。逆に、消費税額が区分されていないと税込金額に対して源泉徴収されるので、天引き額が多くなってしまいます。
Q. 源泉徴収税を「租税公課」で処理してもいい?
いいえ、源泉徴収税は「事業主貸」で処理するのが正しい方法です。源泉徴収税は事業の経費ではなく、事業主個人の所得税の前払いだからです。「租税公課」は事業に関する税金(印紙税、事業税など)を計上する科目であり、源泉徴収税の処理には使いません。
Q. 毎月の源泉徴収税の合計額を簡単に確認する方法は?
freee・マネーフォワード・弥生のいずれでも、「事業主貸」の補助科目に「源泉徴収税」を設定していれば、補助科目の残高一覧から年間の合計額をすぐに確認できます。補助科目を設定していない場合は、仕訳帳で「事業主貸」の取引を検索し、摘要に「源泉」と入力されたものを絞り込む方法もあります。
まとめ
個人事業主の源泉徴収は、正しく帳簿に記録して確定申告で精算すれば、払いすぎた税金を取り戻せる仕組みです。会計ソフトの「事業主貸」勘定に補助科目を設定し、取引先ごと・月ごとに管理しておけば、確定申告時にスムーズに処理できます。
源泉徴収の対象となる報酬を受け取っている方は、この記事を参考に帳簿の記録方法を見直してみてください。
参考リンク:
🐧 ナビ助のおすすめ!

