農業の会計処理は、一般的な事業とは少し異なる部分があります。農業所得用の青色申告決算書に対応した勘定科目、作物ごとの収支管理、農業特有の減価償却資産(農機具やビニールハウスなど)の処理など、農業ならではの経理作業に対応できる会計ソフトを選ぶことが重要です。
この記事では、農業に対応した会計ソフトの選び方と、おすすめのソフトを紹介します。個人農家から法人まで、規模に応じた選択肢をまとめました。

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農業の会計処理で押さえるべきポイント
農業で会計ソフトを使う前に、農業特有の会計処理について理解しておきましょう。
農業所得用の確定申告書類
農業を営む個人事業主の場合、確定申告では「農業所得用の青色申告決算書(収支内訳書)」を使います。これは一般の事業所得用とは様式が異なり、「農産物の棚卸」「小作料」「雇人費」「農具費」など、農業に特化した勘定科目が設定されています。
会計ソフトを選ぶ際には、この農業所得用の決算書に対応しているかどうかが重要なチェックポイントです。
農業特有の勘定科目
農業では、一般の事業では使わない勘定科目がいくつかあります。主なものは以下の通りです。
・種苗費:種子、苗木、球根などの購入費
・素畜費:家畜の購入費
・肥料費:化学肥料、堆肥などの費用
・飼料費:家畜のエサ代
・農薬衛生費:農薬、除草剤、消毒液などの費用
・農具費:農業用の道具や消耗品
・雇人費:農作業を手伝ってもらう人への日当
・小作料・賃借料:農地の賃借料
これらの科目が最初から登録されている会計ソフトを選べば、自分で科目を追加する手間が省けます。
農産物の棚卸
農業では年末時点で在庫として残っている農産物(米、野菜、果物など)の棚卸を行い、その金額を計上する必要があります。棚卸の評価方法には「最終仕入原価法」や「個別法」などがありますが、個人農家では一般的に収穫時の市場価格で評価することが多いです。
農業所得の計算では「農産物の棚卸」が重要です。年末に在庫として残っている農産物は、翌年に販売しても今年の売上には計上しません。正しい棚卸を行うことで、年度ごとの所得を正確に計算できます。
農業対応の会計ソフトおすすめ
農業に使える会計ソフトは、大きく分けて「農業専用ソフト」と「汎用クラウド会計ソフト」の2タイプがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
ソリマチ 農業簿記
農業専用の会計ソフトとして30年以上の実績を持つソリマチの「農業簿記」は、農業の経理に特化したデスクトップ版の会計ソフトです。
・JA(農業協同組合)全中推奨製品
・農業所得用の青色申告決算書に直接対応
・農業特有の勘定科目があらかじめ登録済み
・農産物の棚卸管理機能
・作物別・圃場別の収支管理が可能
・減価償却資産の管理機能
・電子帳簿保存法・インボイス制度に対応
デスクトップ版のソフトなので、インターネット環境が不安定な地域でも安心して使えます。料金は定価66,000円前後ですが、JAを通じて割引購入できる場合もあります。詳細はソリマチの公式サイトで確認してください。

freee会計(農業向け設定)
freee会計は汎用のクラウド会計ソフトですが、農業向けの勘定科目テンプレートをダウンロードして適用することで、農業の経理にも対応できます。
・クラウドなのでスマホ・タブレットからも操作可能
・銀行口座やクレジットカードとの自動連携が充実
・農業所得用の決算書の作成にも対応
・レシート撮影・OCR機能でレシート入力が簡単
・スタータープラン:月額980円(税抜)から
freeeの農業向けテンプレートの設定方法は、freeeの公式ヘルプページで詳しく解説されています。
クラウド会計のメリットは、スマホアプリでスキマ時間に入力できること、銀行口座連携で入金の記帳が自動化されることです。ネット環境が安定している地域であれば、日々の記帳の手間を大幅に削減できます。
マネーフォワード クラウド確定申告
マネーフォワードも汎用クラウド会計ソフトとして農業に使えます。勘定科目のカスタマイズが柔軟にできるため、農業用の科目を手動で追加すれば対応可能です。
・銀行口座やJAバンクとの連携に対応
・自動仕訳の学習機能で記帳が効率化される
・パーソナルミニプラン:年額10,800円(月あたり900円)から
ただし、農業所得用の決算書テンプレートは標準では用意されていないため、決算書の作成は別途手動で対応する必要がある場合があります。
やよいの青色申告オンライン / 弥生会計
弥生の会計ソフトも農業の経理に使えます。勘定科目のカスタマイズが可能で、農業用の科目を追加することで対応できます。
・セルフプラン:初年度無料
・電話サポートが使えるプランがある
・弥生会計(デスクトップ版)なら、より細かい設定が可能
弥生はサポートの手厚さが強みなので、操作に不安がある方はベーシックプラン以上を選ぶと安心です。各プランの料金は弥生の公式サイトで確認してください。
農業専用ソフトと汎用クラウド会計の比較
どちらのタイプが自分に合っているか、ポイントごとに比較します。
農業特有の機能
・農業専用ソフト(ソリマチ):農業向けの科目・決算書・棚卸管理が最初から用意されている
・汎用クラウド(freee・マネーフォワード・弥生):テンプレートの追加やカスタマイズで対応。初期設定に手間がかかる場合がある
操作のしやすさ
・農業専用ソフト:画面デザインはやや古めだが、農業に特化しているため迷いにくい
・汎用クラウド:スマホアプリ対応で、圃場や畑からも入力できる。操作画面がモダンで使いやすい
料金
・農業専用ソフト:買い切り型で初期費用が高め(66,000円前後)。ただし毎月の利用料は不要(サポート契約は別途)
・汎用クラウド:月額900円~980円程度で始められる。年間で約1万円~1.2万円
ネット環境
・農業専用ソフト:デスクトップ版なのでネット不要(ただし、最新版へのアップデート時は必要)
・汎用クラウド:常時ネット接続が必要
山間部などネット環境が不安定な地域では、クラウド会計ソフトの使い勝手が落ちる場合があります。その場合は、デスクトップ版の農業簿記ソフトの方が安心です。
農業の確定申告で気をつけること
農業の確定申告で注意すべきポイントをまとめます。
農業用の青色申告決算書を使う
農業所得は「農業所得用」の青色申告決算書(または収支内訳書)を使います。一般の事業所得用とは様式が異なるため、間違えないように注意してください。
補助金・助成金の処理
農業では各種の補助金や助成金を受け取ることが多いですが、これらは原則として「雑収入」として計上する必要があります。補助金の性質によっては課税対象にならないものもあるため、受け取った補助金の取り扱いについては税理士や税務署に確認しましょう。
農機具の減価償却
トラクターやコンバインなどの農機具は、取得価額が10万円以上の場合は減価償却資産として処理します。農機具の法定耐用年数は7年が一般的です。30万円未満の農機具は、青色申告の場合「少額減価償却資産の特例」を使って全額経費にできます。
家族への給与(専従者給与)
家族に農作業を手伝ってもらっている場合、青色申告なら「青色事業専従者給与」として給与を経費に計上できます。白色申告の場合は「事業専従者控除」として一定額を控除できますが、青色申告の方が控除額を柔軟に設定できます。

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農業向け会計ソフトの選び方まとめ
ここまでの情報を踏まえて、農業で使う会計ソフトの選び方をまとめます。
・農業専門の経理に特化したい、JAとの取引が多い → ソリマチ農業簿記
・スマホで手軽に記帳したい、クラウドで効率化したい → freee会計
・銀行口座連携を重視、JAバンクと連携したい → マネーフォワード
・コストを抑えたい、サポートも欲しい → やよいの青色申告オンライン
兼業農家(本業が別にある農家)であれば、汎用クラウド会計ソフトの方が本業の経理と一元管理できて便利です。専業農家で農業特有の機能をフル活用したい場合は、ソリマチの農業簿記が安心です。
Q&Aコーナー
Q1:農業をやっていますが、青色申告と白色申告のどちらがいいですか?
青色申告を強くおすすめします。65万円の特別控除に加えて、家族への給与を経費にできる「専従者給与」も使えるため、節税効果が大きいです。会計ソフトを使えば複式簿記のハードルもぐっと下がります。
Q2:JA(農協)を通じた売上はどう記帳すればいいですか?
JAからの精算書に基づいて売上を計上します。JAの手数料(販売手数料)は経費として計上できます。精算書の明細を見ながら、売上と手数料を分けて記帳しましょう。
Q3:農業で使うトラックは経費にできますか?
事業用のトラックであれば、購入費用は減価償却資産として経費に計上できます。プライベートでも使う場合は、事業使用割合で按分します。
Q4:ソリマチの農業簿記はMacで使えますか?
ソリマチの農業簿記はWindows専用です。Macユーザーの方は、クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生オンライン)を検討してください。
Q5:農業法人の場合はどの会計ソフトがおすすめですか?
農業法人であれば、弥生会計(法人向け)やfreee会計(法人プラン)が選択肢になります。法人の場合は決算書の様式や税務申告が個人と異なるため、法人対応のソフトを選ぶことが重要です。
まとめ
農業に対応した会計ソフトについて解説しました。要点をまとめます。
・農業の経理には「農業所得用の決算書」「農業特有の勘定科目」「棚卸管理」への対応が必要
・農業専用ソフトならソリマチの農業簿記が定番(JA全中推奨、30年以上の実績)
・クラウド会計ならfreeeが農業向けテンプレート対応で始めやすい
・兼業農家は汎用クラウド会計が便利、専業農家は農業専用ソフトが安心
・青色申告で65万円控除+専従者給与を活用すると節税効果が大きい
農業の経理は独特な部分がありますが、適切な会計ソフトを選べば手間を大幅に減らせます。自分の農業の規模やスタイルに合ったソフトを選んで、確定申告をスムーズに乗り切りましょう。
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