個人事業主として事業が軌道に乗ってくると、「そろそろ法人化したほうがいいのかな?」と考えるタイミングが訪れます。法人化(法人成り)は節税面や社会的信用面で大きなメリットがありますが、タイミングを誤ると逆に損をすることもあります。
この記事では、個人事業主が法人化を検討すべきタイミングの判断基準から、メリット・デメリット、法人化にかかる費用、そして具体的な手続きの流れまで、網羅的に解説します。

🐧 ナビ助のおすすめ!
法人化を検討すべき3つのタイミング
個人事業主が法人化を具体的に検討すべきタイミングは、主に3つあります。
タイミング1:事業所得が800万円〜900万円を超えたとき
個人事業主の所得税は「累進課税」で、所得が増えるほど税率が上がります。一方、法人税の実効税率は約23%〜25%程度で比較的フラットです。
事業所得が800万円〜900万円を超えてくると、個人の所得税率(33%〜)が法人税率を上回るため、法人化による節税効果が出始めます。さらに、法人では役員報酬を経費にできるため、法人と個人の両面で税負担をコントロールできるようになります。
タイミング2:売上が1,000万円を超えたとき
個人事業主として売上が1,000万円を超えると、2年後から消費税の課税事業者になります。法人化すれば、設立後の最大2年間は消費税の免税事業者となれる可能性があります(資本金1,000万円未満の場合)。
このタイミングで法人化すれば、消費税の免税期間を活用した節税効果が期待できます。
タイミング3:事業拡大・資金調達を考えているとき
事業を拡大して従業員を雇いたい、銀行から融資を受けたい、取引先を広げたいといった場合、法人のほうがかなり有利です。法人は社会的信用が高く、融資や取引条件の面で個人事業主よりも優遇されるケースが多くあります。
上記3つのうち、1つでも該当する場合は法人化を具体的に検討する価値があります。複数に該当する場合は、税理士に相談してシミュレーションしてもらうのがおすすめです。
法人化のメリット
1. 節税の幅が広がる
法人化すると、個人事業主では使えなかった節税手段が使えるようになります。
- 役員報酬を経費にできる(給与所得控除が適用される)
- 家族への給与を経費にしやすい
- 社宅制度を活用して住居費を経費にできる
- 退職金を経費にできる(個人事業主は退職金制度なし)
- 生命保険料を経費にできるケースがある
2. 社会的信用が向上する
法人は登記情報が公開されるため、取引先や金融機関からの信用が高まります。個人事業主では取引を断られていた大手企業との取引が可能になるケースも少なくありません。
3. 有限責任になる
株式会社や合同会社は「有限責任」のため、万が一事業が失敗しても、出資額の範囲内で責任を負えばよいことになります(ただし、経営者保証がある場合は別)。
4. 事業承継がしやすい
法人は代表者が変わっても存続するため、事業承継や売却がスムーズに行えます。個人事業主の場合は、廃業して新たに事業を始める形になります。

法人化のデメリット
メリットだけでなく、デメリットも理解した上で判断することが重要です。
1. 設立費用がかかる
法人設立には以下の費用が必要です。
- 株式会社の場合:登録免許税15万円+定款認証5万円+定款印紙代4万円(電子定款なら不要)=約20万円〜24万円
- 合同会社の場合:登録免許税6万円+定款印紙代4万円(電子定款なら不要)=約6万円〜10万円
2. 赤字でも法人住民税の均等割がかかる
法人住民税の均等割は、赤字であっても毎年最低7万円程度が発生します。個人事業主の場合、赤字なら所得税はゼロですが、法人は赤字でもこの固定費がかかります。
3. 会計・税務の手間が増える
法人の決算申告は個人の確定申告に比べて格段に複雑です。多くの法人は税理士に依頼しており、税理士費用として年間20万円〜50万円程度が別途かかるのが一般的です。
4. 社会保険への加入が必須
法人は、役員1人の会社であっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています。国民健康保険・国民年金に比べて保険料が高くなるケースもあります(ただし、将来の年金額は増える)。
法人化のメリットが出るのは、ある程度の所得がある場合です。所得が低い段階で法人化すると、設立費用や維持費がかさんで逆に損をする可能性があります。
法人化の具体的な手続きの流れ
法人化を決めたら、以下の流れで手続きを進めます。
ステップ1:会社の基本事項を決める
会社名(商号)、事業目的、本店所在地、資本金の額、決算月、株主構成などを決定します。
ステップ2:定款を作成・認証する
定款は会社のルールブックです。株式会社の場合は公証役場での認証が必要ですが、合同会社は認証不要です。
ステップ3:資本金を払い込む
発起人の個人口座に資本金を振り込みます。資本金の金額は1円から設定可能ですが、一般的には100万円〜300万円程度にするケースが多いです。
ステップ4:法務局で設立登記する
必要書類を揃えて法務局に登記申請を行います。登記完了までは通常1〜2週間程度です。
ステップ5:各種届出を行う
税務署、都道府県税事務所、市区町村役場、年金事務所、ハローワークなどに、法人設立に関する届出を行います。

🐧 ナビ助のおすすめ!
法人化にかかる費用まとめ
法人化を検討する際に気になるのが費用です。初期費用とランニングコストに分けて整理します。
初期費用
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
| 定款認証手数料 | 3万円〜5万円 | 不要 |
| 定款印紙代 | 0円〜4万円 | 0円〜4万円 |
| 法人印鑑 | 約5,000円〜 | 約5,000円〜 |
| 合計目安 | 約20万円〜25万円 | 約6万円〜11万円 |
年間ランニングコスト
- 法人住民税均等割:約7万円(赤字でも発生)
- 税理士費用:約20万円〜50万円
- 社会保険料:役員報酬額に応じて変動
- 法人向け会計ソフト:月額2,000円〜5,000円程度
法人化のシミュレーション方法
法人化すべきかどうかの判断は、実際にシミュレーションを行うことで明確になります。
自分で簡易シミュレーションする方法
まず、現在の事業所得を把握し、以下の2パターンで税額を計算してみましょう。
- パターンA(個人のまま):事業所得に対する所得税+住民税+事業税+国民健康保険料
- パターンB(法人化した場合):法人税+法人住民税+法人事業税+役員報酬にかかる所得税・住民税+社会保険料+税理士費用
パターンBの合計がパターンAより少なければ、法人化による金銭的メリットがあると判断できます。
無料シミュレーションツールを活用する
freee会社設立やマネーフォワード クラウド会社設立には、個人事業主と法人の税額比較シミュレーション機能が搭載されています。売上や経費の情報を入力するだけで、どちらが有利か概算を確認できます。
ただし、シミュレーションはあくまで概算です。正確な判断が必要な場合は、法人化に詳しい税理士に相談するのがベストです。初回相談無料の税理士事務所も多いので、気軽に問い合わせてみましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 合同会社と株式会社、どちらがいい?
コストを抑えたいなら合同会社、社会的信用を重視するなら株式会社がおすすめです。合同会社は設立費用が安く、決算公告の義務もないため、小規模事業やスタートアップに向いています。
Q. 個人事業主のまま節税するのは難しい?
青色申告特別控除、小規模企業共済、iDeCo、経費の適正化など、個人事業主でもできる節税対策は多くあります。所得が800万円を超えるまでは、個人事業主のまま節税対策を徹底するほうが有利なケースも多いです。
Q. 法人化したら会計ソフトは変更が必要?
freee、マネーフォワード、弥生のいずれも法人プランを用意しています。個人事業主プランからのアップグレードが可能なので、データの引き継ぎもスムーズに行えます。
法人化後の会計ソフト選び
法人化すると、個人事業主時代とは会計処理の内容が大きく変わります。法人向けの会計ソフトを選ぶ際のポイントを押さえておきましょう。
- 法人税申告への対応:法人税の申告書作成に対応しているかを確認。freee会計やマネーフォワード クラウドは法人プランで対応済み
- 給与計算との連携:従業員を雇う場合、給与計算ソフトとの連携がスムーズだと経理が楽になる
- 税理士との共有機能:法人の決算は税理士に依頼するケースが多いため、税理士とのデータ共有が簡単なソフトを選ぶと便利
- 料金体系:法人プランは個人プランより高額になるため、必要な機能と料金のバランスを比較検討する
個人事業主時代と同じメーカーの会計ソフトを使い続ければ、操作に慣れている分スムーズに移行できます。
まとめ
個人事業主の法人化は、タイミング次第で大きな節税効果が得られる一方、設立費用や維持コストも発生します。事業所得が800万円を超えてきた、売上が1,000万円を超えた、事業を拡大したい――このような状況に該当する方は、法人化を具体的に検討してみてください。
判断に迷ったら、税理士に相談してシミュレーションを出してもらうのが確実です。税理士ドットコムのような紹介サービスを活用すれば、法人化に詳しい税理士を見つけやすくなります。

🐧 ナビ助のおすすめ!

