自宅で仕事をしている個人事業主やフリーランスなら、家賃や光熱費、通信費の一部を経費にできることを知っていますか?
これが「家事按分(かじあんぶん)」と呼ばれる仕組みです。事業とプライベートの両方で使っている費用を、事業で使った割合だけ経費として計上できます。
ただし、按分の割合に明確な根拠がないと、税務調査で否認されるリスクがあります。この記事では、家事按分の基本的な考え方から、費目ごとの具体的な計算方法、会計ソフトでの設定方法まで詳しく解説します。

🐧 ナビ助のおすすめ!
家事按分とは?基本の考え方
家事按分とは、事業とプライベートの両方で使っている費用を、事業使用分だけ経費として計上する方法です。
たとえば、自宅の一室を仕事部屋として使っている場合、家賃のうち仕事部屋の面積に相当する割合を経費にできます。個人事業主は自宅兼事務所で働いているケースが多いため、家事按分を正しく理解しておくことは非常に重要です。
家事按分できる主な費用
家事按分の対象となる代表的な費目は以下の通りです。
- 家賃・住宅ローンの利息:自宅の一部を事務所として使用している場合
- 電気代:パソコンや照明など、仕事で使う電力の割合
- 通信費:インターネット回線やスマホの料金
- 水道代・ガス代:自宅で飲食業などを営む場合
- 車両関連費:ガソリン代、駐車場代、車検費用、自動車保険料
- 火災保険料・地震保険料:自宅兼事務所にかけている保険
住宅ローンの「元本返済」は経費にできません。経費にできるのは利息部分のみです。また、持ち家の場合は建物部分の減価償却費を按分して経費計上します。
家事按分の計算方法【費目別に解説】
家賃の按分計算(面積基準)
家賃の按分は「面積基準」で計算するのが一般的です。
計算式:仕事専用スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積 × 100 = 按分率(%)
具体例:
- 自宅全体の面積:60㎡
- 仕事専用スペース:15㎡
- 按分率:15㎡ ÷ 60㎡ = 25%
- 家賃が月10万円の場合:10万円 × 25% = 月2.5万円(年間30万円)が経費
電気代の按分計算(時間基準)
電気代は「使用時間」で按分するのが合理的です。
計算式:1日の業務時間 × 週の稼働日数 ÷ 週の総時間 × 100 = 按分率
具体例:
- 1日の業務時間:8時間
- 週の稼働日数:5日
- 週の業務時間:8時間 × 5日 = 40時間
- 週の総時間:24時間 × 7日 = 168時間
- 按分率:40 ÷ 168 ≒ 24%
通信費の按分計算
インターネット回線やスマホ代は、業務使用の割合で按分します。仕事専用のスマホを使っている場合は100%経費にできますが、プライベートと兼用の場合は50~70%程度が一般的な目安です。
車両関連費の按分計算
車を仕事とプライベートの両方で使用している場合は、走行距離で按分するのが最も客観的です。
計算式:業務での走行距離 ÷ 総走行距離 × 100 = 按分率

按分割合の「根拠」を残すことが重要
税務調査で家事按分が否認されるケースの多くは、按分割合の根拠が不十分なことが原因です。
按分割合を決めたら、その根拠を必ず記録しておきましょう。具体的には以下のような資料を保管しておくと安心です。
- 間取り図に仕事スペースの面積を記載したもの
- 業務時間の記録(カレンダーやタイムトラッキングツールのログ)
- 車両の運転日誌(日付・目的地・走行距離)
- 通信費の使用状況(業務用アプリの利用時間など)
根拠資料は確定申告時に提出する必要はありませんが、税務調査の際に求められたときにすぐ出せるように保管しておくことが大切です。
会計ソフトで家事按分を設定する方法
主要なクラウド会計ソフトには、家事按分の自動計算機能が搭載されています。一度設定しておけば、毎月の経費を自動で按分してくれるので非常に便利です。
freeeの場合
freeeでは「確定申告」メニュー内の「家事按分」画面から設定できます。対象の勘定科目を選んで按分割合を入力するだけで、年末に自動計算してくれます。
マネーフォワードの場合
マネーフォワードでは「決算・申告」メニューの「家事按分」から設定します。勘定科目・補助科目ごとに按分割合を設定でき、確定申告書にも自動で反映されます。
弥生の場合
やよいの青色申告オンラインでは「確定申告」ステップの中で家事按分を設定します。「家事按分の入力」画面で各科目の事業割合を入力すると、自動で計算されます。

🐧 ナビ助のおすすめ!
青色申告と白色申告で家事按分のルールは違う?
青色申告と白色申告では、家事按分の基準が微妙に異なります。
青色申告の場合:事業に使った部分を「合理的に」区分できれば経費にできます。按分割合が10%であっても、根拠があれば認められます。
白色申告の場合:事業で使っている割合が50%を超える部分のみ経費にできるという要件があります。つまり、按分割合が50%以下だと経費計上できないのが原則です。
この違いからも、青色申告のほうが家事按分で有利であることがわかります。まだ白色申告の方は、青色申告への切り替えを検討してみてください。
家事按分でよくある質問
Q. 按分割合は途中で変更できる?
はい、変更できます。たとえば、仕事部屋を広げたり、業務時間が増えたりした場合は、実態に合わせて按分割合を見直しましょう。ただし、変更した理由も記録しておくことをおすすめします。
Q. 按分割合はどのくらいまで認められる?
明確な上限はありませんが、一般的には30~50%程度が多いとされています。80%以上にする場合は、それだけの根拠をしっかり用意しておく必要があります。
Q. 賃貸契約書に「事務所利用不可」と書いてある場合は?
税法上は、実際に事業で使用していれば家事按分は可能です。ただし、賃貸契約の違反になる可能性があるため、大家さんに確認しておくのが望ましいです。

家事按分の具体的な仕訳例
実際に会計ソフトで家事按分を行う場合、仕訳はどのようになるのか見ていきましょう。
毎月の家賃を計上する場合(按分率25%)
家賃10万円のうち、事業分25%(2.5万円)を経費にする場合の仕訳例です。
- 方法1:支払時に全額を経費計上し、年末に家事分を振り替える方法
毎月の支払時:地代家賃 100,000円 / 普通預金 100,000円
年末の振替:事業主貸 900,000円 / 地代家賃 900,000円(12ヶ月分の家事分75%)
- 方法2:支払時に按分して計上する方法
毎月の支払時:地代家賃 25,000円+事業主貸 75,000円 / 普通預金 100,000円
どちらの方法でも結果は同じですが、会計ソフトの家事按分機能を使えば方法1が自動で処理されるため、毎月の入力は全額を経費として記帳するだけでOKです。
電気代を計上する場合(按分率24%)
電気代が月1万円で、事業使用分が24%の場合、年間の経費計上額は以下の通りです。
- 月額:10,000円 × 24% = 2,400円
- 年間:2,400円 × 12ヶ月 = 28,800円
電気代は季節によって金額が変動しますが、按分割合は年間を通じて同じ割合を使うのが一般的です。夏場にエアコンを多く使うからといって、月ごとに按分割合を変える必要はありません。
家事按分で節税できる金額のシミュレーション
家事按分を適用した場合、実際にどのくらい節税できるのかシミュレーションしてみましょう。
フリーランスエンジニア(自宅作業)のケース
- 家賃10万円(按分率30%)→ 年間36万円の経費
- 電気代1万円(按分率25%)→ 年間3万円の経費
- 通信費8,000円(按分率60%)→ 年間5.76万円の経費
- 車両費5万円(按分率20%)→ 年間12万円の経費
合計:年間約56.76万円が経費として計上可能です。
所得税率20%+住民税10%の場合、約17万円の節税効果になります。家事按分をしないと、この17万円を余計に税金として支払うことになるわけです。

家事按分に関するQ&A
Q. 家事按分は税務署に届出が必要?
いいえ、届出は不要です。確定申告書や青色申告決算書に按分後の金額を記載するだけで大丈夫です。ただし、税務調査の際に按分の根拠を聞かれることがあるため、根拠資料は手元に保管しておきましょう。
Q. 引っ越しをした場合、按分割合はどうする?
引っ越しをして仕事スペースの面積が変わった場合は、引っ越し後の実態に合わせて按分割合を変更します。引っ越し前と引っ越し後で月割りで計算するのが正確です。
Q. カフェでの作業が多い場合、カフェ代は経費になる?
仕事のためにカフェを利用した場合、その飲食代は「会議費」や「雑費」として経費にできます。ただし、プライベートの利用と明確に区別する必要があるため、レシートに「作業内容」や「打ち合わせの相手」をメモしておくと安心です。
Q. 持ち家の場合、住宅ローンは経費にできる?
住宅ローンの元本返済は経費にできませんが、利息部分は家事按分して経費計上が可能です。また、建物の減価償却費も按分して経費にできます。ただし、住宅ローン控除を受けている場合は、事業使用割合が50%を超えると住宅ローン控除が使えなくなるため注意が必要です。
Q. 家事按分は白色申告でもできる?
白色申告でも家事按分は可能ですが、前述の通り「事業使用割合が50%を超える部分」のみが経費として認められる制限があります。この制限を考えると、青色申告に切り替えたほうが節税面で有利です。
まとめ
家事按分は、自宅で仕事をしている個人事業主やフリーランスにとって欠かせない節税手段です。
- 家事按分とは、事業とプライベート兼用の費用を事業分だけ経費にする方法
- 家賃は面積基準、電気代は時間基準など、費目に合った計算方法を使う
- 按分割合の根拠(間取り図や業務時間の記録)を保管しておく
- 青色申告なら50%以下でも経費計上でき、白色申告より有利
- クラウド会計ソフトの家事按分機能を使えば自動計算で手間いらず
家事按分の設定は、freee・マネーフォワード・弥生のどの会計ソフトでも簡単にできます。まだ設定していない方は、今年の確定申告に向けて早めに準備しておきましょう。
家事按分の考え方についてさらに詳しく知りたい方は、freee公式の家事按分解説ページや、弥生公式の按分計算ガイドも参考にしてみてください。また、具体的な税務判断に迷う場合は、国税庁の所得税に関するタックスアンサーを確認するのがおすすめです。
🐧 ナビ助のおすすめ!

