「家内労働者等の必要経費の特例」をご存じでしょうか。内職やシール貼り、在宅ワーク、外交員など、特定の働き方をしている方は、実際の経費が少なくても最大65万円まで必要経費として認められるという制度です。
この特例を使えば、経費のレシートがほとんどなくても所得を大きく圧縮できるため、税金が大幅に減る可能性があります。知らないだけで損をしている方も少なくありません。
この記事では、家内労働者等の必要経費の特例の対象者、控除額の計算方法、具体的な確定申告の手順までわかりやすく解説します。

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家内労働者等の必要経費の特例とは


家内労働者等の必要経費の特例とは、家内労働者等に該当する方の事業所得や雑所得について、実際の経費が65万円に満たない場合でも、65万円を必要経費として計上できる制度です(国税庁「No.1810 家内労働者等の必要経費の特例」)。
通常の確定申告では実際に使った経費しか計上できませんが、この特例を使えば最低65万円が保障されるため、少ない経費で大きな控除が受けられます。
令和7年度税制改正により、家内労働者等の必要経費の特例の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。令和7年分の確定申告から新しい金額が適用されます。
家内労働者等に該当する人の条件


この特例を使えるのは、「家内労働者等」に該当する方に限られます。具体的には以下のような働き方をしている方です。
対象者の例
| 働き方 | 具体例 |
|---|---|
| 家内労働者 | 内職、シール貼り、袋詰め、部品の組立など委託を受けて自宅で行う作業 |
| 外交員 | 保険の外交員、セールスレディなど(報酬が事業所得・雑所得のもの) |
| 集金人 | NHKの集金人、新聞の集金人など |
| 電力量計の検針人 | 電力会社やガス会社の検針業務を請け負う方 |
| 在宅ワーカー | 特定の取引先から業務委託を受けて自宅で行うデータ入力、ライティングなど |
該当しない人
以下のような方は、家内労働者等には該当しません。
- 不特定多数の取引先と仕事をしているフリーランス
- 自分で商品を仕入れて販売する物販事業者
- 給与として報酬を受け取っている雇用労働者
ポイントは「特定の者」から委託を受けて仕事をしているかどうかです。取引先が1社~少数で、その委託のもとで働いている場合に該当する可能性が高くなります。


必要経費の特例の計算方法
この特例の控除額は、給与所得の有無によって計算が変わります。以下のパターンごとに解説します。
パターン1:給与所得がない場合
給与収入がなく、家内労働者としての事業所得または雑所得だけがある場合は、実際の経費と65万円のうち大きいほうが必要経費になります。
たとえば、家内労働の収入が80万円で実際の経費が10万円の場合:
- 通常の計算:80万円 − 10万円 = 所得70万円
- 特例を使った場合:80万円 − 65万円 = 所得15万円
このように、特例を使うだけで所得が55万円も減ります。
パターン2:給与所得がある場合
給与収入もある場合は、65万円から「給与所得控除の額」を差し引いた残りが特例で使える必要経費の上限になります。
たとえば、パートの給与収入が100万円(給与所得控除55万円)、内職の収入が50万円(実際の経費3万円)の場合:
- 特例で使える経費の上限:65万円 − 55万円 = 10万円
- 実際の経費(3万円)と特例(10万円)を比較して、大きいほうの10万円が必要経費
- 内職の所得:50万円 − 10万円 = 40万円
給与所得控除が65万円以上ある場合は、この特例による追加の控除はありません。つまり、給与収入が約162万円以上の方は、特例のメリットがないケースもあります。
確定申告での手続き方法
家内労働者等の特例を使って確定申告する際の具体的な手順を説明します。
ステップ1:対象者かどうか確認する
まず、自分が「家内労働者等」に該当するか確認します。前述の条件(特定の者から委託を受けて、自宅等で加工・サービスの提供等を行う)に当てはまるかどうかがポイントです。
ステップ2:計算書を作成する
「家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例の適用を受ける場合の必要経費の額の計算書」を作成します。この書類は国税庁のウェブサイト(国税庁 家内労働者計算書)からダウンロードできます。
ステップ3:申告書を作成する
確定申告書に特例適用後の所得を記載します。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、「家内労働者等の特例」に関する質問に答えるだけで自動的に計算してくれます。
ステップ4:申告書と計算書を提出する
確定申告書に上記の計算書を添付して提出します。e-Taxで電子申告する場合も、計算書のデータを入力して送信します。
この特例を使うために事前の届出や税務署への申請は不要です。確定申告時に計算書を添付するだけで適用されます。


家内労働者の特例を使った場合の税額シミュレーション
特例を使った場合と使わなかった場合で、税額がどう変わるか具体例で比較してみましょう。
例:内職収入が100万円、実際の経費が8万円、他に収入なしの場合
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 収入 | 100万円 | 100万円 |
| 必要経費 | 8万円 | 65万円 |
| 所得 | 92万円 | 35万円 |
| 基礎控除(48万円)後の課税所得 | 44万円 | 0円(非課税) |
| 所得税 | 約22,000円 | 0円 |
このように、特例を使うだけで約22,000円の税金が不要になります。さらに住民税も大幅に減るため、実質的な節税効果はもっと大きくなります。
確定申告が不要になるケース
この特例を使うと、確定申告自体が不要になるケースもあります。
家内労働の収入のみの場合
家内労働等による収入だけで、他に収入がない場合、収入が65万円以下なら特例により所得がゼロになるため、確定申告は不要です。
給与と家内労働の収入がある場合
給与収入と家内労働の収入を合わせた場合でも、所得が一定以下なら確定申告が不要になる可能性があります。具体的な計算は、給与所得控除と特例の控除をあわせて行います。
家内労働者の特例でよくある疑問Q&A
Q. クラウドソーシング(ランサーズ、クラウドワークスなど)の収入にも使える?
特定の者からの委託であれば該当する可能性があります。たとえば、クラウドソーシングを通じて特定の1社から継続的に業務を受注している場合は、家内労働者等に該当するケースがあります。ただし、不特定多数から仕事を受けている場合は該当しません。
Q. 青色申告特別控除との併用はできる?
家内労働者等の特例と青色申告特別控除は併用できません。どちらか一方を選ぶことになります。収入が大きい場合は青色申告のほうが有利になるケースもあるので、両方の計算をしてから判断しましょう。
Q. 事業所得と雑所得の両方がある場合は?
事業所得と雑所得の合計が65万円を超える場合、特例の65万円の控除は事業所得と雑所得に按分して適用されます。それぞれの収入に応じた配分で計算します。
Q. 実際の経費が65万円を超えている場合は?
実際の経費が65万円を超えている場合は、実際の経費をそのまま計上すればよく、この特例を使う必要はありません。特例は「実際の経費が65万円に満たない場合」に有利になる制度です。
Q. 確定申告の期限はいつ?
毎年2月16日から3月15日が確定申告の期間です。還付申告の場合は1月から提出可能です。この期間内に申告書と計算書を提出してください。
Q. ヤクルトレディやポスティングなどは家内労働者に含まれる?
ヤクルトレディ(訪問販売員)やポスティング業務は、特定の企業から委託を受けて行う仕事であるため、家内労働者等に該当する可能性が高いです。ただし、複数の企業から並行して仕事を受けている場合や、自分で仕事を選んでいる場合は判断が異なることがあるため、税務署に確認することをおすすめします。
Q. 必要経費の特例はパートの給与がある場合でも使える?
はい、パートの給与がある場合でもこの特例は使えます。ただし、65万円から給与所得控除を差し引いた残額が特例で使える経費の上限になります。パート収入が少なく給与所得控除が小さい場合ほど、特例のメリットが大きくなります。具体的な計算例は本文の「パターン2」を参考にしてください。
Q. 複数の委託元から仕事をもらっている場合は対象になる?
家内労働者法では「特定の者」から委託を受けることが要件とされていますが、委託元が2~3社程度であれば「特定の者」に該当するとされるケースが多いです。ただし、不特定多数の取引先と契約している場合は該当しません。判断に迷う場合は管轄の税務署に相談しましょう。


特例を使うなら記録の残し方から


家内労働者等の必要経費の特例は、収入の内訳と働き方を説明できることが前提になります。支払元ごとの入金と、かかった実費を分けて記録しておくと、65万円と実額のどちらが有利かを比べやすくなります。
手書きで管理する場合は現金出納帳、支払調書や契約書の控えは書類ボックスにまとめておく、という分け方をしている方が多いようです。
まとめ
家内労働者等の必要経費の特例は、内職や在宅ワーク、外交員などの方が使える制度で、実際の経費が少なくても最大65万円を必要経費として計上できます。令和7年度の税制改正で控除額が55万円から65万円に引き上げられ、さらに使いやすくなりました。
事前の届出は不要で、確定申告時に計算書を1枚添付するだけで適用されます。自分が該当するかわからない場合は、国税庁のウェブサイトや税務署の相談窓口で確認してみてください。会計ソフトを活用すれば、特例の計算もスムーズに行えます。
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