会社の規模が大きくなってくると、会計ソフトを複数人で使う必要が出てきます。ただし全員に同じ権限を与えてしまうと、誤操作や不正のリスクが高まるため注意が必要です。
この記事では、freee・マネーフォワード・弥生の3大会計ソフトにおける複数ユーザー対応と権限管理の設定方法を詳しく解説します。内部統制の観点から押さえるべきポイントも紹介するので、チームで経理を回している企業の方はぜひ参考にしてください。

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なぜ権限管理が必要なのか
誤操作による仕訳の破壊を防ぐ
誰でも仕訳を編集・削除できる状態だと、うっかり別の担当者が入力した仕訳を消してしまったり、金額を書き換えてしまう事故が起きます。特に確定済みの仕訳を触れるのは限られた人だけにしておくべきです。
不正防止と内部統制
経理業務では「入力する人」と「承認する人」を分ける「職務分掌」が内部統制の基本です。同じ人が入力から承認まで行えてしまうと、架空経費の計上や横領のリスクが高まります。権限管理は不正防止の第一歩になります。
情報漏洩リスクの低減
会計データには取引先情報、売上金額、給与データなど機密性の高い情報が含まれています。全員が全データにアクセスできる状態は避けるべきです。必要な情報だけを見られるよう、閲覧権限を適切に設定しましょう。
freeeの権限管理機能
メンバーの招待と権限セットの設定
freeeでは「設定」→「メンバーの追加・管理」からメンバーを招待できます。招待時に6種類の権限セットから適切なものを選んで付与する仕組みです。
代表的な権限セットは以下の通りです。
- 管理者:すべての機能にアクセス可能
- 経理担当:仕訳の入力・編集・レポート閲覧が可能
- 閲覧のみ:データの閲覧はできるが編集はできない
- 仕訳承認:仕訳の承認権限を持つ
カスタム権限の設定
freeeのスタンダードプラン以上では、カスタム権限セットを作成できます。標準の権限セットでは対応できない細かい設定が必要な場合に便利です。たとえば「仕訳の入力はできるが削除はできない」「特定の口座だけ閲覧可能」といった設定ができます。詳しい設定方法はfreee公式のカスタム権限ガイドを参照してください。


マネーフォワードの権限管理機能
ユーザーの追加と権限設定
マネーフォワード クラウド会計では、「設定」→「ユーザー管理」からメンバーを追加できます。権限は「管理者」「一般」「閲覧」の3段階が基本です。
マネーフォワード クラウド会計Plusの強み
内部統制を重視する企業には、マネーフォワード クラウド会計Plusが選択肢に入ります。通常版との違いは以下の通りです。
- 仕訳の承認フローを設定できる(入力→承認→確定の3段階)
- 部門ごとのアクセス制限が可能
- 操作ログの詳細な記録・監査対応
- 承認済み仕訳のロック機能
従業員数が増えて内部統制の整備が求められるフェーズでは、Plusへの移行を検討しましょう。料金についてはマネーフォワード クラウド公式サイトで最新情報を確認してください。
弥生会計の権限管理機能
弥生会計オンラインのユーザー管理
弥生会計オンラインでは、メインユーザーとサブユーザーの2種類でアカウントを管理します。サブユーザーには閲覧権限や入力権限を個別に設定できます。
ただし、freeeやマネーフォワードと比較すると、細かいカスタム権限の設定は限定的です。小規模な事業(経理担当が1〜2名程度)であれば十分ですが、10名以上のチームで使う場合はやや物足りないかもしれません。
デスクトップ版の弥生会計はネットワーク版が必要
弥生会計のデスクトップ版で複数ユーザーが同時にアクセスするには、ネットワーク版(弥生会計 ネットワーク)が必要です。この場合もユーザーごとの権限設定が可能で、マスター権限・入力権限・閲覧権限などを割り当てられます。
権限管理の充実度はfreee・マネーフォワードが弥生より一歩リードしている傾向があります。チーム規模や内部統制の要件に合わせて選びましょう。
権限設計のベストプラクティス
最小権限の原則を守る
各ユーザーには業務に必要な最小限の権限だけを付与します。「とりあえず管理者権限」はNGです。入力担当者には入力権限だけ、閲覧だけでいい方には閲覧権限だけを付与しましょう。
入力と承認を分離する
仕訳を入力する人と承認する人は別の担当者にします。これは内部統制の基本中の基本であり、不正防止に欠かせない仕組みです。
退職者のアカウントは速やかに無効化する
退職した従業員のアカウントが残ったままだと、不正アクセスのリスクがあります。退職時には速やかにアカウントを無効化または削除しましょう。
定期的な権限の棚卸しを行う
半年に1回程度、誰にどの権限が付与されているかを確認する「権限棚卸し」を実施しましょう。異動や役割変更に伴って不要な権限が残っているケースは多いです。
Q&Aコーナー
Q. 個人事業主でも権限管理は必要ですか
自分一人で経理をしているなら、権限管理は基本的に不要です。ただし税理士にアカウントを共有する場合は、「閲覧のみ」の権限を付与しておくと安全に情報共有できます。
Q. freeeの無料プランでも複数ユーザーを追加できますか
freeeの料金プランによってメンバー数の上限が異なります。スタータープランでは3名まで、スタンダードプラン以上では上限が緩和されます。最新のプラン内容はfreee公式サイトで確認してください。
Q. 操作ログは確認できますか
freee・マネーフォワードのいずれも操作ログを確認できる機能があります。「誰が・いつ・何を操作したか」を追跡できるため、万が一の際の調査にも役立ちます。
Q. 税理士に渡す権限はどのレベルがいいですか
税理士には「閲覧+仕訳入力」の権限を付与するのが一般的です。freeeにはアドバイザー向けの専用権限セットがあり、税理士がデータを確認・修正しやすい設計になっています。管理者権限は渡さないほうが安全です。
Q. 権限を変更すると既存の仕訳に影響はありますか
権限の変更は、変更後の操作に対して適用されます。変更前に作成された仕訳が消えたり書き換わったりすることはありません。ただし、権限が下がったユーザーは過去の仕訳を編集・削除できなくなるため、必要な修正は権限変更前に済ませておくのがおすすめです。
Q. 会計事務所と共有する場合のおすすめ設定は
freeeには「アドバイザー制度」があり、顧問税理士が専用のアドバイザーアカウントでクライアントのデータにアクセスできます。この方法ならクライアント側のユーザー枠を消費しないうえ、税理士に適切な権限を付与できます。マネーフォワードにも同様のアドバイザー連携機能があります。弥生の場合は「弥生PAP会員」の税理士であればスムーズに連携できる仕組みが用意されています。
権限管理は地味な作業に思えますが、トラブルが起きてからでは遅いです。チームで会計ソフトを使うなら、最初にしっかり設計しておきましょう。会計ソフトの選び方全般については会計ソフトの選び方ガイドもチェックしてみてください。
チーム規模別の権限設計例
2〜5名の小規模チーム
経理担当者が1〜2名程度の小規模事業なら、権限設計はシンプルで構いません。「管理者」「経理担当」「閲覧のみ」の3レベルで十分です。代表が管理者、経理スタッフが経理担当、税理士が閲覧のみという構成が定番です。
10〜30名の中規模チーム
中規模になると、部門別のアクセス制限や仕訳承認フローが必要になってきます。freeeのカスタム権限やマネーフォワード クラウド会計Plusの承認機能が活きてくるフェーズです。「入力担当」「承認担当」「閲覧担当」「管理者」の4レベル構成がおすすめです。
30名以上の大規模チーム
大規模になると、監査対応やSOX法対応も視野に入ります。操作ログの詳細記録、部門別・口座別のアクセス制限、承認済み仕訳のロック機能など、内部統制の要件を満たす機能が必要です。マネーフォワード クラウド会計Plusが有力な選択肢になります。


アカウント運用まわりで用意しておきたいもの
ユーザーが増えるほど、「誰にどの権限を渡したか」「共有アカウントはどれか」が曖昧になりやすいです。ブラウザの記憶任せにせず、管理台帳として紙のパスワード管理帳に控えを残し、金庫や鍵付きの引き出しで保管している事業者もいます。
退職者が出たときは、アカウントを無効化するだけでなく、手元に残った権限一覧や口座情報の紙も処分することになります。そのまま捨てられない書類が出る職場では、細断できるシュレッダーを1台置いておくと処理が進めやすくなります。
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