法人を設立したら、毎年やってくるのが「決算」です。「何を、どういう順番で、いつまでにやればいいのか」――初めて決算を迎える経営者にとって、わからないことだらけではないでしょうか。
法人決算は事業年度の収支をまとめ、税額を計算して申告・納税する一連の手続きです。個人事業の確定申告に比べて提出書類が多く、税務の専門知識も求められます。しかし全体の流れを理解すれば、一つずつ着実に進めることができます。
この記事では、法人決算の全体像から具体的な手順、自分でやる場合と税理士に頼む場合の判断基準、使える会計ソフトまで、わかりやすく解説します。

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法人決算とは|個人事業との違い
法人決算とは、法人が事業年度ごとに経営成績と財政状態を確定させ、法人税等の申告・納税を行うことです。会社法では株式会社に対して計算書類(決算書)の作成を義務付けています。
個人事業の確定申告との主な違い
- 決算期:個人事業は1月〜12月で固定。法人は自由に設定できる(3月決算、9月決算など)
- 提出書類:法人は法人税申告書(別表)、決算書、勘定科目内訳明細書、事業概況説明書など多数。個人事業は確定申告書と青色申告決算書が中心
- 申告先:法人は税務署に加え、都道府県と市区町村にも申告が必要。個人事業は税務署のみ
- 申告期限:事業年度終了日の翌日から2か月以内(届出により延長も可能)。個人事業は翌年3月15日
- 税目:法人は法人税・法人住民税・法人事業税・消費税(課税事業者の場合)を申告。個人事業は所得税と消費税
法人決算の全体スケジュール
3月決算法人を例に、決算から申告までのスケジュールを確認します。事前に予定を立てておくことで、期限切れを防げます。
- 3月31日:事業年度終了(決算日)
- 4月上旬〜中旬:帳簿の締め、銀行残高の確認、決算整理仕訳の入力
- 4月中旬〜5月上旬:試算表チェック、決算書の作成、税額計算
- 5月中旬:法人税申告書(別表)の作成、地方税申告書の作成
- 5月31日:法人税・法人住民税・法人事業税の申告・納税期限
申告期限は「事業年度終了日の翌日から2か月以内」です。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が課されるため、スケジュール管理は重要です。なお、「申告期限の延長の特例」を届け出ることで、申告期限を1か月延長できるケースもあります(ただし納税期限は延長されません)。
法人決算を自分でやる手順
手順1:帳簿の締めと残高確認
まず、事業年度中の全取引が正しく記帳されているか確認します。銀行口座の残高と帳簿残高が一致しているか、銀行残高調整表を作成して確認するのが基本です。現金出納帳の残高も実際の手元現金と照合しましょう。
この段階で帳簿に抜け漏れがあると、決算書の数字が正しくなりません。月次で帳簿をチェックする習慣があると、この工程がスムーズに進みます。
手順2:決算整理仕訳
期末時点で調整が必要な項目の仕訳を入力します。主な決算整理仕訳は以下のとおりです。
- 減価償却費の計上:固定資産の価値を期間按分して経費化する
- 棚卸資産(在庫)の計上:実地棚卸の結果を帳簿に反映する
- 前払費用・未払費用の計上:期間対応を正確にするための調整
- 貸倒引当金の計上:回収の見込みが薄い売掛金に対して引当金を設定する
- 法人税等の概算計上:未払法人税等として決算書に反映する
- 賞与引当金の計上:翌期に支給予定の賞与を当期費用として計上する
手順3:決算書の作成
会計ソフトで貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表を出力します。数値に不整合がないか、前期との比較で大きな変動がないかを確認しましょう。異常値があれば決算整理仕訳に誤りがないか見直します。
手順4:法人税申告書(別表)の作成
法人税申告書は「別表」と呼ばれる複数の書類で構成されます。基本的に提出が必要な別表と、主な付属書類は以下のとおりです。
- 別表一:法人税額の計算(申告書の本体)
- 別表二:同族会社の判定に関する明細書
- 別表四:所得金額の計算(会計上の利益と税務上の所得の調整)
- 別表五(一):利益積立金額等の計算
- 別表五(二):租税公課の納付状況
- 勘定科目内訳明細書:各勘定科目の明細
- 事業概況説明書:法人の基本情報や事業内容の概要
これらの書類に加え、消費税の課税事業者は消費税申告書の作成も別途必要です。
手順5:地方税の申告書作成
法人住民税と法人事業税は、都道府県税事務所と市区町村にそれぞれ申告します。法人税の申告書とは別の様式を使いますが、法人税額をもとに計算するため、法人税の申告が先に必要です。複数の自治体に事業所がある場合は、それぞれの自治体に申告します。
手順6:申告・納税
申告書の提出はe-Tax(国税)とeLTAX(地方税)でオンライン申告が可能です。納税も電子納税やダイレクト納付に対応しています。書面での提出も認められていますが、電子申告のほうが効率的で、提出の記録も残しやすいです。

法人決算を自分でやるか、税理士に頼むかの判断基準
自分でやっても問題ないケース
- 売上規模が小さい(年商1,000万円以下程度)で取引がシンプル
- 赤字で法人税の納税額がほぼない
- 会計ソフトを使いこなせていて、仕訳の知識がある
- 設立初年度で取引数が少ない(マイクロ法人など)
税理士に依頼したほうがいいケース
- 売上規模が大きく、取引が複雑(業種が多岐にわたるなど)
- 消費税の申告が必要(課税事業者でインボイス対応も求められる)
- 設備投資や借入があり、減価償却や特別控除の適用判断が必要
- 税務調査への対応に不安がある
- 本業に集中したい(経理にかける時間を最小限にしたい)
税理士に決算申告を依頼する場合の費用相場は、年間15万〜30万円程度です(売上規模・仕訳量による)。月次の記帳代行も含めると年間20万〜50万円程度になります。一方で、申告ミスによるペナルティや節税機会の見逃しを考えると、費用対効果は十分にあるケースが多いです。

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法人決算に使える会計ソフト
法人決算をスムーズに進めるには、クラウド会計ソフトの活用が有効です。日々の記帳から決算書の出力まで一気通貫で対応できます。
- freee会計:法人向けプランで決算書出力に対応。UIがシンプルで初心者でも取り組みやすい。法人税申告書の一部作成にも対応
- マネーフォワード クラウド会計:法人決算に必要なレポートが充実。税理士との共有がスムーズで、連携実績も豊富
- 弥生会計オンライン:法人専用のクラウド会計。電話サポートが手厚く、操作の不明点をその場で解決できる
よくある質問(Q&A)
Q. 法人決算の申告期限を過ぎたらどうなる?
期限後申告となり、無申告加算税(税額の5〜20%)と延滞税が課されます。特に悪質な場合は重加算税(35〜40%)が適用されることもあります。期限管理は徹底しましょう。なお、自主的に期限後申告を行った場合は無申告加算税が軽減されるケースもあります。
Q. 決算期はいつに設定するのがいい?
繁忙期を避けて設定するのが一般的です。経理作業に余裕がある時期を選ぶことで、決算準備がスムーズに進みます。3月決算が最多ですが、設立月に合わせるケースも多いです。決算月によって税理士の繁忙度も異なるため、3月決算以外にすると対応してもらいやすい場合もあります。
Q. 法人の決算で納める税金は?
法人税(国税)、法人住民税(地方税)、法人事業税(地方税)、消費税(課税事業者の場合)が主な税金です。中小法人(資本金1億円以下)の法人税率は、所得800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%です(軽減税率適用期間。最新の税率は国税庁の公式サイトで確認してください)。
Q. 赤字でも決算は必要?
赤字でも決算・申告は必要です。赤字の申告をしておくことで、翌期以降の黒字と相殺(繰越欠損金の控除)ができます。法人の場合、欠損金は10年間繰り越せるため、赤字年度でも申告しておくことが将来の節税につながります。
まとめ
法人決算は、帳簿の締め→決算整理→決算書作成→申告書作成→提出・納税という流れで進めます。個人事業の確定申告に比べて提出書類が多く、申告先も複数あるため、しっかりとしたスケジュール管理が重要です。
会計ソフトを活用すれば決算書の作成までは自分でできますが、法人税申告書(別表)の作成は難易度が高いため、税理士との連携も検討しましょう。初年度は特に、税理士のサポートを受けながら進めるのが安心です。
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