年末調整は、従業員の1年間の所得税を正しく精算する手続きです。毎月の給与から天引きされている源泉所得税は、あくまで概算額。年末調整で各種控除を反映し、最終的な年税額との差額を調整します。
「年末調整って具体的に何をすればいいの?」「従業員から何を集めればいいの?」「計算の流れがわからない」――担当者にとって悩みの多い業務ですが、手順を理解すれば着実に進められます。
この記事では、年末調整の全体像から必要書類、具体的な計算手順、効率化の方法まで、経営者や経理担当者向けにわかりやすく解説します。

🐧 ナビ助のおすすめ!
年末調整とは何か
年末調整とは、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税の合計額と、1年間の正しい所得税額の差額を精算する手続きです。
毎月の源泉徴収額は「源泉徴収税額表」に基づいて計算されますが、生命保険料控除や配偶者控除などは月々の源泉徴収には反映されていません。年末調整でこれらの控除を反映し、正しい税額を確定させます。
源泉徴収の合計額が正しい年税額より多ければ差額が「還付」され、少なければ「追加徴収」されます。多くの場合は還付(返金)になるため、従業員にとっては年末のちょっとしたボーナス感覚です。
年末調整の対象者
- 12月31日時点で在籍している従業員(正社員、パート、アルバイト含む)
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員
年収2,000万円を超える従業員や、中途退職で再就職していない方などは年末調整の対象外となり、本人が確定申告を行います。2か所以上から給与を受けている方は、主たる勤務先でのみ年末調整を行い、副業分は確定申告で精算します。
年末調整に必要な書類
従業員から以下の書類を回収する必要があります。従業員への案内は10月頃から始めて、11月中旬〜末までに全員分を回収するのが一般的です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除の2年目以降)
- 各種控除証明書(生命保険料、地震保険料、iDeCo等の払込証明書)
- 前職の源泉徴収票(中途入社の場合)
記事執筆時点の税制改正では、基礎控除の引き上げ(本則62万円+特例で合計最大104万円)に伴い申告書の様式が変更される予定です。最新の様式は国税庁のサイトからダウンロードできます。

年末調整の計算手順(7ステップ)
ステップ1:年間の給与総額を算出
1月〜12月に支給した給与と賞与の総額を合計します。通勤手当(非課税分)は除きます。残業手当、住宅手当、家族手当などの諸手当は含めます。
ステップ2:給与所得控除を差し引く
給与総額から給与所得控除を差し引いて「給与所得」を算出します。給与所得控除は給与収入の金額に応じて自動的に決まります。記事執筆時点では、給与所得控除の最低保障額が引き上げられています(詳細は国税庁の公式サイトで確認してください)。
ステップ3:所得控除を差し引く
給与所得から以下のような所得控除を差し引き、「課税給与所得」を求めます。
- 基礎控除:所得に応じて段階的に適用。記事執筆時点では本則62万円に特例が加算される仕組み
- 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者の所得に応じて適用
- 扶養控除:16歳以上の扶養親族がいる場合に適用
- 社会保険料控除:健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の本人負担分
- 生命保険料控除・地震保険料控除:保険料の支払いに応じて控除
- 小規模企業共済等掛金控除:iDeCoの掛金が全額控除
- 障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除:該当する場合に適用
ステップ4:所得税額を算出
課税給与所得に所得税の税率を掛けて税額を算出します。所得税は超過累進税率(5%〜45%の7段階)が適用されます。
ステップ5:住宅ローン控除を差し引く
住宅借入金等特別控除がある場合は、算出された税額から控除額を差し引きます。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で処理できます。
ステップ6:復興特別所得税を加算
所得税額の2.1%を復興特別所得税として加算し、「年調年税額」を算出します。100円未満は切り捨てます。
ステップ7:過不足額を精算
年調年税額と、毎月の源泉徴収税額の合計を比較します。源泉徴収合計 > 年調年税額なら差額を従業員に還付し、逆なら不足分を追加徴収します。12月の給与支給時に精算するのが一般的です。

年末調整後にやること
年末調整が終わった後も、翌年1月末までにやるべき業務があります。
- 源泉徴収票の作成・交付:従業員一人ひとりに源泉徴収票を交付する(翌年1月31日まで)。税務署への提出が必要な場合(年収500万円超の従業員など)もある
- 法定調書の提出:税務署に「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出(翌年1月31日まで)
- 給与支払報告書の提出:従業員が住む市区町村に給与支払報告書を提出(翌年1月31日まで)。これにより住民税の計算が行われる
🐧 ナビ助のおすすめ!
年末調整を効率化する方法
年末調整の作業を大幅に効率化するなら、クラウド型の給与計算ソフトの活用がおすすめです。手計算や紙ベースでの運用から切り替えることで、作業時間と人的ミスを大幅に削減できます。
- freee人事労務:従業員がスマホから控除申告書を入力でき、データの集計から源泉徴収票の発行までをソフト上で完結
- マネーフォワード クラウド給与:年末調整に必要な計算が自動化され、従業員への書類配布もオンラインで対応。会計ソフトとの連携で仕訳も自動
- 弥生給与 Next:電話サポートが充実しており、初めての年末調整でも安心して進められる。操作に迷ったときにすぐ相談できる
国税庁が提供する「年末調整ソフト」も無料で利用できますが、機能は限定的です。従業員が多い場合や、給与計算と一体で管理したい場合は、クラウドの給与計算ソフトのほうが効率的です。
よくある質問(Q&A)
Q. 年末調整と確定申告の違いは?
年末調整は会社が従業員に代わって所得税を精算する手続き、確定申告は個人が自分で所得税を申告する手続きです。給与所得のみの方は年末調整で完結しますが、副業収入がある方、医療費控除を受けたい方、ふるさと納税でワンストップ特例を使わなかった方などは確定申告が別途必要です。
Q. 個人事業主は年末調整が必要?
個人事業主自身は年末調整の対象ではなく、確定申告で所得税を精算します。ただし、従業員やアルバイトを雇っている場合は、事業主として従業員の年末調整を行う義務があります。
Q. 年末調整を間違えたらどうする?
翌年1月末までなら再年末調整が可能です。それ以降は従業員本人が確定申告で修正することになります。控除証明書の提出が遅れた場合も、1月末までなら再計算で対応できます。
Q. 扶養控除の対象となる親族の範囲は?
配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)で、生計を一にしていて合計所得金額が一定額以下の方が対象です。記事執筆時点の税制改正で所得要件が緩和されているため、最新の基準は国税庁のサイトで確認してください。
まとめ
年末調整は、従業員の1年間の所得税を正しく精算するための重要な手続きです。必要書類の回収→所得控除の計算→年税額の算出→過不足精算→源泉徴収票の作成→法定調書の提出という流れで進めます。
給与計算ソフトを使えば、計算の自動化や書類の電子回収が可能になり、作業負担を大幅に削減できます。毎年の税制改正にも自動で対応してくれるため、担当者の安心材料にもなります。
関連記事:個人事業主が従業員を雇ったら?源泉徴収・年末調整のやり方を解説
関連記事:給与計算ソフトの選び方|freee人事労務・マネーフォワード給与・弥生給与を比較
関連記事:確定申告のやり方を初めての人向けに解説|全体の流れが5分でわかる
参考:freee公式 – 年末調整とは?書類別の書き方と必要書類
🐧 ナビ助のおすすめ!

