インボイス制度の導入に伴い、免税事業者から課税事業者になった個人事業主やフリーランスの消費税負担を大幅に抑えてくれる「2割特例」。しかし、この特例には適用期限があることをご存じでしょうか。
「いつまで使えるの?」「終了後はどうすればいい?」という疑問を持っている方に向けて、この記事では2割特例の適用期限と、終了後に検討すべき対策、さらに新たに創設された「3割特例」についてわかりやすく解説します。

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インボイス制度の2割特例とは
2割特例は、インボイス制度の導入をきっかけに免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)になった方を対象とした、消費税の負担軽減措置です。
通常、消費税の計算は本則課税(実際の仕入税額を差し引く方式)か簡易課税(みなし仕入率で計算する方式)で行いますが、2割特例を使うと売上にかかる消費税額の2割だけを納税すればよく、残りの8割が控除される計算になります。
例えば年間売上が税込550万円(消費税50万円分)の場合、2割特例なら消費税の納税額は50万円 × 20% = 10万円で済みます。本則課税で仕入控除が少ない場合と比べると、大きな節税効果があります。
2割特例を使える人の条件
- インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった方
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
- 事前届出は不要で、確定申告時に選択できる
もともと課税売上高が1,000万円を超えて課税事業者だった方は対象外です。あくまで「インボイス登録がなければ免税事業者だったはずの方」が対象になります。
2割特例の適用期限はいつまで?
2割特例の適用対象期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間です。
個人事業主の場合
個人事業主は暦年(1月1日~12月31日)が課税期間です。2026年9月30日を含む課税期間は「2026年1月1日~2026年12月31日」なので、2026年分(2027年3月に申告)まで2割特例が使えます。
法人の場合
法人は事業年度が課税期間になるため、2026年9月30日を含む事業年度が最後の適用課税期間となります。例えば3月決算法人なら、2026年4月1日~2027年3月31日の事業年度まで適用可能です。
2026年度の税制改正大綱において、2割特例の延長は盛り込まれていません。当初の予定どおり終了する見込みです。

2割特例の終了後に導入される「3割特例」とは
2割特例の終了に伴い、2026年度税制改正で新たに創設されたのが「3割特例」です。2割特例の後継的な位置づけの制度で、個人事業者(フリーランス・個人事業主)限定の経過措置となっています。
3割特例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用対象者 | 個人事業者(フリーランス・個人事業主)のみ ※法人は対象外 |
| 納税額 | 売上にかかる消費税額の3割(70%が控除される) |
| 適用期間 | 2027年分~2028年分の2年間 |
| 届出 | 不要(確定申告書に付記するだけ) |
2割特例との違い
2割特例と3割特例を比較すると以下のようになります。
| 比較項目 | 2割特例 | 3割特例 |
|---|---|---|
| 納税額の割合 | 売上消費税の20% | 売上消費税の30% |
| 控除割合 | 80% | 70% |
| 対象者 | 個人・法人 | 個人のみ |
| 適用期間 | 2023年10月~2026年9月の属する課税期間 | 2027年分~2028年分 |
納税額の負担は2割から3割に増えますが、本則課税や簡易課税と比較すると依然として有利になるケースが多いです。
2割特例終了後の選択肢を整理
2割特例が終了し、3割特例の期間(2027年~2028年)も過ぎた後は、以下のいずれかの方法で消費税を計算・納税することになります。
1. 本則課税(原則課税)
実際に支払った仕入・経費の消費税額を差し引いて納税する方式です。仕入や経費が多い業種(物販、製造業など)では有利になりやすいですが、すべての取引について消費税の区分経理が必要で事務負担が大きくなります。
2. 簡易課税
業種ごとの「みなし仕入率」を使って計算する方式です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合に選択できます。仕入が少ないサービス業やフリーランスの場合、みなし仕入率(第五種事業なら50%)が適用されるため、本則課税より有利になるケースが多いです。
簡易課税を選ぶ場合は、適用を受けようとする課税期間の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
3. 免税事業者に戻る
インボイス発行事業者の登録を取りやめる届出を提出すれば、翌課税期間から免税事業者に戻ることも可能です。ただし、インボイスが発行できなくなるため、取引先との関係に影響が出る可能性があります。

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今からやっておくべき準備
2割特例の終了に備えて、以下のことを今から準備しておきましょう。
1. 自分の業種のみなし仕入率を確認する
簡易課税を選ぶ場合、業種ごとのみなし仕入率によって納税額が変わります。自分の事業がどの事業区分に該当するか確認しておくことが大切です。簡易課税と本則課税の比較は「消費税の簡易課税と本則課税の違い|どっちを選ぶべきかスッキリ解説」を参考にしてください。
2. 本則課税と簡易課税のシミュレーションをする
自分の売上と仕入・経費の金額をもとに、本則課税と簡易課税でそれぞれどのくらいの納税額になるかシミュレーションしましょう。会計ソフトを使えば、消費税の金額を自動で集計できます。
3. 届出書の提出期限を把握する
簡易課税を選ぶ場合は、適用を受けたい年の前年12月31日までに届出書を提出する必要があります。例えば2027年分から簡易課税を適用したい場合、2026年12月31日までに届出書を出しましょう。
4. 会計ソフトで消費税区分を正しく設定する
本則課税に移行する場合、日々の取引を消費税区分ごとに正確に入力する必要があります。freee、マネーフォワード クラウド確定申告、やよいの青色申告オンラインなどの会計ソフトは消費税の区分経理に対応しているので、事前に設定を済ませておきましょう。
2割特例・3割特例・簡易課税・本則課税を一覧で比較
制度が多くて混乱しがちなので、すべての選択肢を一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | 2割特例 | 3割特例 | 簡易課税 | 本則課税 |
|---|---|---|---|---|
| 納税額 | 売上消費税の20% | 売上消費税の30% | 売上消費税 ×(1−みなし仕入率) | 売上消費税 − 実際の仕入消費税 |
| 届出 | 不要 | 不要 | 事前届出が必要 | 不要(原則) |
| 対象者 | インボイス登録で課税事業者になった方 | 個人事業者のみ | 基準期間売上5,000万円以下 | 制限なし |
| 適用期間 | 2026年分まで | 2027年~2028年分 | 制限なし(届出後) | 制限なし |
| 還付 | 不可 | 不可 | 不可 | 可能 |
設備投資などで大きな仕入が発生した場合は、本則課税なら消費税の還付を受けられる可能性があります。一方、仕入が少ないサービス業では2割特例や3割特例が有利になりやすいです。
インボイス制度の最新情報は国税庁のインボイス特設サイト(国税庁 インボイス制度)で確認できます。また、2割特例の詳細は財務省の解説ページ(財務省 インボイス制度に関する改正)も参考になります。
よくある質問(Q&A)
Q. 2割特例は届出が必要?
A. 事前届出は不要です。確定申告書を提出する際に、2割特例を適用する旨を選択すればOKです。簡易課税のように事前に届出書を出す手続きは必要ありません。
Q. 2割特例と簡易課税はどちらが有利?
A. 多くのケースで2割特例の方が有利です。例えばサービス業(みなし仕入率50%)の場合、簡易課税なら納税額は売上消費税の50%ですが、2割特例なら20%で済みます。
Q. 3割特例は法人でも使える?
A. 3割特例は個人事業者(フリーランス・個人事業主)限定の措置です。法人は対象外なので、2割特例終了後は本則課税か簡易課税に移行する必要があります。
Q. 基準期間の売上が1,000万円を超えたら2割特例は使えなくなる?
A. そのとおりです。2割特例は「インボイス登録がなければ免税事業者だったはずの方」が対象なので、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると対象外になります。
2割特例の最終年にやっておくべきチェックリスト
2026年が個人事業主にとって2割特例の最終年です。以下のことを年内に済ませておきましょう。
- 2026年分の確定申告で2割特例を忘れず選択する(2027年3月が申告期限)
- 2027年分から簡易課税を適用したい場合は、2026年12月31日までに届出書を提出する
- 本則課税と簡易課税の納税額をシミュレーションして、有利な方を選ぶ
- 会計ソフトの消費税設定を確認し、適切な計算方式に切り替えておく
- 3割特例が使える条件(個人事業主であること)を確認する
- 免税事業者に戻る選択肢も含め、取引先への影響を検討する
まとめ
インボイス制度の2割特例について、重要なポイントをまとめます。
- 2割特例の適用期限は2026年9月30日の属する課税期間まで(個人事業主は2026年分が最後)
- 2026年度税制改正で延長はされず、当初予定どおり終了
- 2027年分~2028年分は個人事業主限定の「3割特例」が新設
- 2029年分以降は本則課税か簡易課税を選択する必要がある
- 簡易課税の届出は前年末までに提出が必要なので、早めの準備が大切
制度の移行期はやるべきことが多いですが、会計ソフトを活用して日々の取引を正確に記録していれば、どの方式を選んでもスムーズに対応できます。インボイス制度への対応全般については「インボイス制度の個人事業主の対応」も参考にしてください。
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