副業で赤字が出た場合、その赤字を給与所得と相殺して税金を取り戻すことができるのが「損益通算」という仕組みです。ただし、副業の所得区分が「事業所得」か「雑所得」かによって、損益通算できるかどうかが大きく変わります。
この記事では、損益通算の基本ルールから、副業の所得区分の判定方法、確定申告での具体的なやり方まで、しっかり解説します。

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損益通算とは
損益通算とは、ある所得で生じた赤字(損失)を、他の所得の黒字と相殺できる制度です。相殺した分だけ課税所得が減り、結果として所得税や住民税が安くなります。
損益通算ができる所得の種類
所得税法上、損益通算ができるのは以下の4種類の所得で赤字が出た場合に限られます。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
この4つ以外の所得(雑所得、給与所得、一時所得など)の赤字は、損益通算の対象外です。
副業の赤字で損益通算するための条件
副業で赤字が出た場合に損益通算ができるかどうかは、その副業が「事業所得」に該当するかどうかにかかっています。
事業所得と雑所得の違い
| 比較項目 | 事業所得 | 雑所得 |
|---|---|---|
| 損益通算 | できる | できない |
| 青色申告特別控除 | 受けられる(最大65万円) | 受けられない |
| 赤字の繰越 | できる(3年間) | できない |
| 帳簿の保存 | 必要 | 一定の場合に必要 |
つまり、副業の赤字で節税したいなら、その副業が「事業所得」として認められる必要があるというわけです。雑所得に該当すると、赤字が出てもそのまま切り捨てになってしまいます。
事業所得として認められる判断基準
副業が事業所得になるか雑所得になるかは、以下の要素で総合的に判断されます。
- 独立・継続・反復して行われているか:単発のアルバイトではなく、自分の判断で継続的に行っている事業活動か
- 営利性・有償性があるか:利益を得ることを目的としているか
- 帳簿書類を保存しているか:収入・経費の記帳と帳簿の保存がされているか
- 社会通念上、事業と認められるか:事業としての規模や実態があるか
帳簿書類を保存していても、副業の収入が300万円以下で主たる収入(給与など)に対する割合が10%未満の場合は、雑所得として扱われる可能性があります。過度な節税目的での「赤字の事業所得」は税務調査で否認されるリスクがあるため、注意が必要です。

損益通算の計算方法
損益通算の計算は、基本的に以下の手順で行います。
計算例
会社員のAさんが副業で事業所得の赤字が出た場合を例に考えてみましょう。
- 給与所得:500万円
- 副業の事業所得:▲80万円(赤字)
損益通算後の合計所得 = 500万円 − 80万円 = 420万円
この420万円に各種控除(基礎控除、社会保険料控除など)を差し引いた金額が課税所得になります。損益通算しなかった場合と比べると、所得税率20%の場合で約16万円の節税になります(住民税も別途軽減されます)。
損益通算の順序
損益通算には法律で決められた「通算の順序」があります。
- 経常所得グループ(不動産所得、事業所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得)で内部通算
- 譲渡所得・一時所得グループで内部通算
- それでもなお赤字が残る場合は、グループ間で通算
個人的な副業の損益通算であれば、ステップ1の「事業所得の赤字を給与所得と通算する」だけで対応できるケースがほとんどです。
確定申告での損益通算のやり方
具体的な確定申告での手順を説明します。
ステップ1:帳簿を整理する
副業の収入と経費を正確に帳簿に記録します。会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードとの連携で取引データを自動取込できるため、手入力の手間が大幅に省けます。
ステップ2:青色申告決算書(または収支内訳書)を作成する
事業所得の場合、青色申告なら「青色申告決算書」、白色申告なら「収支内訳書」を作成します。ここに副業の売上と経費を記載し、赤字額を算出します。
ステップ3:確定申告書に記入する
確定申告書の第一表に、給与所得と事業所得(赤字の場合はマイナスで記入)を記載します。損益通算の計算は確定申告書等作成コーナーや会計ソフトが自動で行ってくれます。
ステップ4:必要書類を添付して提出
以下の書類を準備して提出します。
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 青色申告決算書 or 収支内訳書
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 各種控除の証明書

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赤字が残った場合の「繰越控除」
損益通算をしてもなお赤字が残った場合、青色申告者なら翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越すことができます(純損失の繰越控除)。
例えば、副業の赤字が100万円で、給与所得が80万円の場合、損益通算で相殺しきれなかった20万円を翌年以降の所得から差し引けるのです。
損益通算の注意点
損益通算を活用する際には、以下の点に注意が必要です。
1. 雑所得の赤字は損益通算できない
これが最も重要なポイントです。副業が「雑所得」に該当する場合、いくら赤字が出ても他の所得と通算することはできません。副業を始めたら帳簿を付けて保存し、事業所得として認められる実態を整えておきましょう。
2. 不動産所得の土地取得借入金利息は通算不可
不動産所得の赤字のうち、土地の取得に要した借入金の利息部分は損益通算の対象外です。建物部分の借入金利息は通算できます。
3. 生活用資産の譲渡損は通算不可
自家用車やブランド品などの「生活に通常必要な資産」を売却して損失が出ても、損益通算はできません。
4. 過度な節税は税務調査のリスクあり
副業で意図的に赤字を出して損益通算で節税する行為は、税務署にチェックされやすいです。経費の水増しや架空経費の計上は脱税に当たります。正当な事業活動の結果として赤字が出た場合のみ、損益通算を活用しましょう。
事業所得として認めてもらうためにやっておくべきこと
副業を事業所得として申告し、損益通算を活用したいなら、以下の準備をしておくことが重要です。
1. 開業届を提出する
税務署に開業届を提出することで、税務署に「事業を行っている」という意思表示ができます。開業届の提出自体は事業所得の絶対条件ではありませんが、事業の実態を示す根拠の一つになります。
2. 帳簿を正確に付ける
事業所得として認められるための最重要ポイントです。収入と経費を正確に記帳し、帳簿書類を保存しましょう。会計ソフトを使えば、記帳作業を大幅に効率化できます。
3. 青色申告承認申請書を提出する
青色申告にしておくと、65万円の特別控除が受けられるだけでなく、赤字の3年間繰越もできるようになります。損益通算を視野に入れるなら、青色申告にしない理由はありません。
4. 事業用の口座を分ける
個人の生活費と事業のお金を混ぜないよう、事業専用の銀行口座を開設しておくのがおすすめです。会計ソフトと事業用口座を連携させれば、取引の自動取込もスムーズになります。
事業所得と雑所得の判定基準については国税庁の通達(国税庁 所得税基本通達)が参考になります。また、副業の確定申告全般については弥生の解説ページ(弥生 副業の確定申告のやり方)もわかりやすくまとまっています。
副業が赤字でなくても確定申告すべき?
副業の所得が20万円以下の場合、会社員は所得税の確定申告が不要です(ただし住民税の申告は必要)。
しかし、副業が赤字の場合は確定申告をした方が得です。損益通算により給与から天引きされた所得税の一部が還付される可能性があるためです。
副業の確定申告全般については「確定申告で副業の収入を申告する方法」も参考にしてください。

会計ソフトで損益通算もスムーズに
損益通算の計算自体はそこまで難しくありませんが、前提となる帳簿の整理や確定申告書の作成には手間がかかります。会計ソフトを使えば、日々の記帳から確定申告書の作成まで一気通貫で行えるため、損益通算の処理もスムーズです。
特にfreeeやマネーフォワード クラウド確定申告は、給与所得と事業所得の両方を入力できるため、損益通算の計算結果を反映した確定申告書を自動作成してくれます。会計ソフトの比較は「freee・マネーフォワード・弥生を三つ巴で比較」をどうぞ。
よくある質問(Q&A)
Q. 副業がアフィリエイトの場合、事業所得?雑所得?
A. アフィリエイト収入が事業所得か雑所得かは、規模や継続性、帳簿の有無で判断されます。本格的に事業として取り組んでおり、帳簿も保存しているなら事業所得として認められる可能性がありますが、小規模で片手間の場合は雑所得とされることが多いです。
Q. 損益通算すると会社にバレる?
A. 確定申告で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にすれば、副業の住民税が会社の給与から天引きされないため、バレにくくなります。ただし、損益通算で住民税が減額された場合、会社側が住民税決定通知書で気づく可能性はゼロではありません。
Q. 赤字の繰越控除は白色申告でも使える?
A. 白色申告では使えません。赤字の繰越控除(3年間)は青色申告者のみの特典です。損益通算を活用するなら、青色申告にしておくことを強くおすすめします。
Q. 損益通算で住民税も安くなる?
A. 所得税だけでなく、住民税も課税所得をベースに計算されるため、損益通算で課税所得が減れば住民税も連動して安くなります。
まとめ
確定申告の損益通算について、重要なポイントをまとめます。
- 損益通算ができるのは事業所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得の赤字のみ
- 副業の赤字で損益通算するには、「事業所得」に該当することが条件(雑所得は不可)
- 事業所得の判定には帳簿の保存が重要なポイント
- 損益通算しきれない赤字は、青色申告なら3年間繰越可能
- 過度な節税目的の赤字計上は税務調査のリスクがある
- 会計ソフトを使えば帳簿作成から確定申告書の作成まで一気通貫で対応できる
副業をしている方は、開業届を出して青色申告にしておくと、損益通算や繰越控除など活用できる節税制度が広がります。節税対策の全体像は「個人事業主の節税対策まとめ」も参考にしてください。
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