「自分の所得税がいくらになるのか、計算方法がよくわからない…」という個人事業主の方は少なくありません。会社員なら勤務先が年末調整で処理してくれますが、個人事業主は自分で計算して確定申告をする必要があります。
所得税の計算は、仕組みさえ理解すれば決して難しくありません。「収入 – 経費 – 所得控除 = 課税所得」に税率を掛けるという流れが基本です。
この記事では、個人事業主の所得税の計算方法を、ステップごとにわかりやすく解説します。税率の速算表から、使える所得控除、節税のポイントまで網羅しているので、ぜひ参考にしてください。

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所得税計算の全体の流れ
個人事業主の所得税は、以下の4ステップで計算します。
- 事業の収入金額を集計する
- 必要経費を差し引いて「事業所得」を算出する
- 各種所得控除を差し引いて「課税所得」を算出する
- 課税所得に税率を掛けて「所得税額」を算出する
それぞれのステップを順番に見ていきましょう。
ステップ1:事業の収入金額を集計する
まず、1月1日から12月31日までの1年間で得た事業の収入(売上)をすべて集計します。ここでの「収入」は、実際に入金されたかどうかに関わらず、発生ベース(売上が確定した時点)で計上するのが原則です。
例えば、12月に納品して翌年1月に入金された報酬は、12月の収入として計上します。
ステップ2:必要経費を差し引いて事業所得を出す
収入金額から必要経費を差し引いた金額が「事業所得」です。
事業所得 = 収入金額 – 必要経費
必要経費として認められるのは、事業を行うために直接必要な支出です。代表的なものを挙げると、以下のようなものがあります。
- 通信費(インターネット回線、携帯電話料金など)
- 消耗品費(文房具、パソコン周辺機器など)
- 地代家賃(事務所の賃料、自宅を兼ねる場合は家事按分)
- 旅費交通費(打ち合わせの交通費、出張費用など)
- 外注費(業務の一部を外部に委託した費用)
- 水道光熱費(事業に使う分を家事按分)
自宅で仕事をしている場合、家賃や光熱費は「家事按分」によって事業利用分だけを経費にします。按分の比率は面積比や使用時間比で合理的に計算する必要があります。
ステップ3:各種所得控除を差し引く
事業所得から「所得控除」を差し引いた金額が「課税所得」です。
課税所得 = 事業所得 – 所得控除の合計
個人事業主が使える主な所得控除
所得控除にはさまざまな種類があります。個人事業主がよく利用するものを以下にまとめました。
- 基礎控除:すべての納税者が対象。合計所得2,400万円以下で48万円(記事執筆時点。税制改正により変動する場合あり)
- 青色申告特別控除:最大65万円(e-Tax利用+複式簿記+期限内申告が条件)
- 社会保険料控除:国民健康保険料、国民年金保険料の支払額全額
- 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済やiDeCoの掛金全額
- 生命保険料控除:支払った生命保険料に応じて最大12万円
- 医療費控除:年間の医療費が10万円を超えた部分
- 配偶者控除・扶養控除:配偶者や扶養親族がいる場合
これらの控除を漏れなく活用することが、節税の第一歩です。特に小規模企業共済やiDeCoは掛金の全額が所得控除になるので、節税効果が大きい方法です。


ステップ4:税率を掛けて所得税額を出す
所得税の税率(超過累進課税)
日本の所得税は「超過累進税率」を採用しています。課税所得が増えるほど、その超えた部分に対して高い税率が適用される仕組みです。税率は5%から45%まで7段階に分かれています。
国税庁が公表している速算表を使えば、簡単に計算できます(国税庁 所得税の税率)。
- 課税所得 195万円以下:税率5%、控除額0円
- 課税所得 195万円超~330万円以下:税率10%、控除額97,500円
- 課税所得 330万円超~695万円以下:税率20%、控除額427,500円
- 課税所得 695万円超~900万円以下:税率23%、控除額636,000円
- 課税所得 900万円超~1,800万円以下:税率33%、控除額1,536,000円
- 課税所得 1,800万円超~4,000万円以下:税率40%、控除額2,796,000円
- 課税所得 4,000万円超:税率45%、控除額4,796,000円
計算式は「所得税額 = 課税所得 × 税率 – 控除額」です。
復興特別所得税
記事執筆時点では、算出した所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」が上乗せされます。
納める所得税 = 所得税額 × 1.021
具体的なシミュレーション例
ここからは、実際の数字を使ってシミュレーションしてみましょう。
例:年間売上800万円・経費300万円の場合
- 事業所得 = 800万円 – 300万円 = 500万円
- 所得控除(青色申告特別控除65万円 + 基礎控除48万円 + 社会保険料控除60万円 + 小規模企業共済84万円)= 257万円
- 課税所得 = 500万円 – 257万円 = 243万円
- 所得税額 = 243万円 × 10% – 97,500円 = 145,500円
- 復興特別所得税込み = 145,500円 × 1.021 = 約148,555円
もし白色申告で青色申告特別控除がなく、小規模企業共済にも加入していなければ、課税所得は392万円となり、所得税は約40万円に跳ね上がります。控除の有無で約25万円もの差が出ることになります。


所得税以外に個人事業主が納める税金
所得税だけでなく、個人事業主は以下の税金も納める必要があります。全体の税負担を把握しておきましょう。
- 住民税:課税所得の約10%(都道府県民税+市区町村民税)
- 個人事業税:事業所得が290万円を超える場合、業種に応じて3%~5%
- 消費税:基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合、または適格請求書発行事業者として登録している場合
- 国民健康保険料:所得に応じて計算(自治体により異なる)
これらを合わせると、事業所得500万円の方で税金と社会保険料の合計はおおよそ収入の15%~20%程度になるケースが多いです。ただし、自治体や扶養家族の人数などによって大きく変わるため、正確な金額はシミュレーションツールで確認するのがおすすめです。
個人事業主の所得税を抑える節税のポイント
青色申告を活用する
前述のとおり、青色申告特別控除は最大65万円の所得控除が受けられます。会計ソフトを使えば複式簿記のハードルも低いので、まだ白色申告の方はぜひ切り替えを検討してください。
経費を漏れなく計上する
事業に関連する支出を経費として漏れなく計上することが重要です。特に家事按分で計上できる家賃・光熱費・通信費は見落としがちなポイントです。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済は、月額1,000円から70,000円まで自由に設定でき、掛金の全額が所得控除になります。年間最大84万円の控除は大きな節税効果を生みます。退職金の積み立てとしても機能するため、一石二鳥です(中小機構 小規模企業共済)。
iDeCoを活用する
個人事業主の場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金は月額最大68,000円(年間816,000円)まで拠出でき、全額が所得控除の対象です。老後の資産形成と節税を同時に行えます。
よくある質問(Q&A)
Q. 所得税の計算は自分でやらなければならない?
個人事業主は自分で計算して確定申告をする必要がありますが、会計ソフトを使えば自動計算してくれます。freee・マネーフォワード・弥生などの確定申告ソフトなら、日々の記帳から申告書の作成まで一気にこなせるので、計算ミスの心配もほぼありません。
Q. 所得税の支払い時期は?
確定申告の期限は原則3月15日で、そのタイミングで所得税を一括納付します。振替納税を利用すれば、4月中旬頃の口座引き落としにすることも可能です。また、予定納税(前年の所得税が15万円以上の場合)は7月と11月に分割して納付します。
Q. 税率が上がる境目で調整するべき?
税率は超過累進課税なので、「課税所得が少し増えたせいで全体の税率が上がる」ということはありません。あくまで、境目を超えた部分だけに高い税率が適用されます。無理に所得を調整する必要はなく、正しく計上することが大切です。
自分の税額を試算するときに手元にあると助かるもの
ここまで見てきたように、所得税は所得控除の積み上げ方で結果が大きく変わります。住民税や個人事業税、国民健康保険料まで含めた全体像を一度自分で組み立ててみると、どの控除を優先すべきかが見えてきます。個人事業主向けの税金の本は、控除の一覧と使い方が整理されているので、記事で触れた小規模企業共済やiDeCoの位置づけを確認するのにも使えます。
また、上のシミュレーションのように「課税所得 × 税率 − 控除額 × 1.021」を何パターンか試すときは、桁数の多い金額を扱うことになります。12桁表示の実務向け電卓は、数字が読み取りやすくキーも大きめなので、確定申告前の検算がラクになります。気になる方はチェックしてみてください。
まとめ
個人事業主の所得税は、「収入 – 経費 – 所得控除 = 課税所得」に税率を掛けるというシンプルな構造です。計算の流れを理解しておけば、確定申告にも余裕を持って取り組めます。
- 所得税は超過累進課税(5%~45%の7段階)で計算する
- 青色申告特別控除(最大65万円)は強力な節税手段
- 小規模企業共済やiDeCoの掛金は全額所得控除になる
- 経費の計上漏れをなくすことも重要な節税ポイント
- 会計ソフトを使えば、計算から申告まで効率的に進められる
まずは自分の収入と経費から課税所得を概算してみることから始めてみましょう。会計ソフトのシミュレーション機能を活用すれば、節税対策の効果も一目で把握できます。
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