「今年は赤字だったから確定申告しなくてもいいかな…」と考えていませんか?実は、赤字のときこそ確定申告をすべきタイミングです。
赤字を正しく申告すれば、他の所得との損益通算や翌年以降の繰越控除が使えるため、将来の税負担を大きく減らせます。特に青色申告をしている方にとって、赤字の申告は「貯金」のようなものです。
この記事では、個人事業主が赤字で確定申告をするメリットを一つひとつ整理し、損益通算と繰越控除の仕組みをわかりやすく解説します。

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赤字でも確定申告が必要?義務と任意の違い
所得税の申告義務
個人事業主の場合、事業所得が赤字で他の所得と合算しても課税所得がゼロ以下になるなら、所得税の確定申告は法律上の義務ではありません。
しかし、義務がなくても申告した方が得になるケースがほとんどです。赤字を申告しないと、損益通算も繰越控除も使えず、その損失は「なかったこと」になってしまいます。
住民税の申告は別
所得税の確定申告をしない場合、住民税の申告を別途行う必要があります。確定申告を行えば住民税の申告は不要になるので、手間を省く意味でも確定申告をしておく方が合理的です。
メリット1:損益通算で他の所得と相殺できる
損益通算とは
損益通算とは、事業所得の赤字を他の所得(給与所得や不動産所得など)と相殺できる制度です。例えば、会社員が副業として個人事業を営んでいて赤字が出た場合、給与所得から赤字分を差し引くことで、所得税の還付を受けられる可能性があります。
損益通算の対象になる所得
損益通算できるのは、以下の4種類の所得から生じた損失に限られます(国税庁 損益通算)。
- 事業所得
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 山林所得
雑所得の赤字は損益通算の対象外です。副業の所得が「雑所得」に分類される場合は、他の所得と相殺できないので注意してください。
具体例
例えば、会社員として給与所得が400万円あり、副業の事業所得が100万円の赤字だった場合、損益通算後の合計所得は300万円になります。給与から天引きされていた所得税の一部が還付される可能性があります。


メリット2:青色申告の繰越控除で翌年以降の税金を減らせる
繰越控除とは
青色申告をしている個人事業主なら、事業所得の赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。翌年以降に黒字になった場合、過去の赤字と相殺して課税所得を圧縮できます。
具体例
以下のようなケースを考えてみましょう。
- 1年目:事業所得 -200万円(赤字)
- 2年目:事業所得 +300万円(黒字)
繰越控除を使えば、2年目の課税対象は 300万円 – 200万円 = 100万円 です。繰越控除をしなければ300万円に対して課税されるため、税負担に大きな差が生まれます。
この繰越控除は3年間有効なので、赤字を複数年にまたがって使い切ることも可能です。
繰越控除の条件
- 青色申告をしていること(白色申告では一部の被災事業用資産の損失などに限定される)
- 赤字が出た年に確定申告(損失申告)をすること
- 翌年以降も連続して確定申告をすること(途中で申告を飛ばすと繰越が途切れる)
繰越控除は「連続して確定申告を行うこと」が条件です。赤字の翌年に確定申告をスキップすると、繰り越した損失は使えなくなってしまいます。黒字でも赤字でも、毎年きちんと確定申告をしましょう。
メリット3:繰戻し還付で前年の税金が戻ってくる
繰戻し還付とは
青色申告者には、赤字を翌年以降に繰り越すだけでなく、前年に繰り戻して前年に支払った所得税の還付を受ける方法もあります。これを「純損失の繰戻し還付」といいます。
具体例
例えば、前年に所得税を30万円納めていた方が、今年200万円の赤字になった場合、前年の所得に赤字を繰り戻すことで、前年の所得税の一部または全部が還付されます。
繰戻し還付の条件
- 前年も青色申告をしていること
- 前年に所得税を納めていること
- 赤字が出た年の確定申告と一緒に「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出すること
繰戻し還付は繰越控除との選択制です。どちらが有利かは、翌年以降の所得の見込みによって変わるため、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。


メリット4:住民税・国民健康保険料も安くなる
住民税への影響
赤字を確定申告で正しく報告すると、住民税にも反映されます。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、赤字の年に申告しておけば翌年の住民税が安くなります。
国民健康保険料への影響
国民健康保険料も前年の所得をベースに計算されます。赤字の申告をしておけば、翌年の保険料が下がる可能性があります。特に所得が大幅に減った年には、保険料の軽減措置(7割軽減、5割軽減、2割軽減)の対象になることもあるため、申告しないのは損です。
メリット5:各種証明書の発行に役立つ
確定申告をしていれば、所得証明書や課税証明書を自治体から発行してもらえます。これらの証明書は、以下のような場面で必要になります。
- 住宅ローンの審査
- 賃貸物件の契約
- 保育園の入園申し込み
- 融資の申し込み
- 各種給付金・補助金の申請
確定申告をしていないと、これらの証明書が発行されず、社会生活で不便が生じることがあります。赤字であっても申告しておくことで、いざというときに困りません。
赤字申告の手順
青色申告決算書で損失額を確定する
まず青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)を作成し、事業所得がマイナスであることを確定させます。会計ソフトを使っていれば、日々の記帳が正しくできていれば自動的に損失額が計算されます。
確定申告書第四表(損失申告用)を作成する
赤字の確定申告では、通常の確定申告書に加えて「第四表(損失申告用)」を使います。ここに損失の金額や繰越する金額を記載します。
e-Taxまたは書面で提出する
所得税の確定申告期限(原則3月15日)までに提出します。翌年以降に繰越控除を使う場合は、翌年の確定申告でも第四表に繰越損失額を記載することを忘れないようにしてください。


赤字申告の注意点
意図的な赤字は税務調査のリスクになる
正当な事業活動の結果として赤字になることは問題ありませんが、経費を過大に計上して意図的に赤字を作る行為は、税務調査で否認されるリスクがあります。プライベートの支出を経費に混ぜたり、架空の経費を計上するのは脱税行為にあたるため、絶対にやめましょう。
雑所得の赤字は損益通算できない
副業収入が「雑所得」に分類される場合、その赤字は損益通算の対象外です。近年、国税庁の通達で副業の事業所得と雑所得の区分が厳格化されています。開業届を出していても、実態が伴わなければ事業所得として認められないケースがあるので注意が必要です。
白色申告では繰越控除が限定的
白色申告の場合、純損失の繰越控除が使えるのは「被災事業用資産の損失」や「変動所得の損失」に限られます(弥生 青色申告の繰越損失)。通常の事業の赤字は繰り越せないため、赤字の恩恵をフルに活かすなら青色申告への切り替えを検討してください。
よくある質問(Q&A)
Q. 開業1年目の赤字も繰り越せる?
はい。開業1年目から青色申告をしていれば、初年度の赤字も翌年以降3年間繰り越せます。開業時は初期投資で赤字になりやすいので、開業届と同時に青色申告承認申請書を提出しておきましょう。
Q. 赤字が3年分溜まった場合はどうなる?
繰越控除の期限は3年間です。3年以内に黒字で相殺しきれなかった赤字は、4年目以降は使えなくなります。古い年度の赤字から先に控除されるため、最も古い赤字が期限切れになる前に黒字で吸収できるかが判断ポイントです。
Q. 繰越控除と繰戻し還付は併用できる?
同じ年の赤字について、繰越控除と繰戻し還付を両方使うことはできません。ただし、赤字の一部を繰り戻して一部を繰り越すという使い方は可能です。シミュレーションした上で、より有利な方法を選択しましょう。
赤字の年を無駄にしないための備え
繰越控除は「毎年続けて申告していること」が前提なので、赤字の年ほど記録を残しておくことが効いてきます。会計ソフトに取り込めない現金の入出金や、後から思い出しにくい細かい経費は、手書きの帳簿ノートに書き留めておくと入力漏れを防げます。
あわせて、黒字に戻ったときにどの控除を使うかを先に考えておくと、繰越控除の効かせ方も組み立てやすくなります。フリーランス向けの節税本は、経費・所得控除・共済の使い分けを一冊で整理しているので、赤字の年の棚卸しに使うという手もあります。
まとめ
個人事業主が赤字になっても、確定申告をすることで多くのメリットが得られます。申告しなければ「赤字がなかったこと」になり、節税の機会を失ってしまいます。
- 損益通算で他の所得と赤字を相殺できる
- 青色申告なら赤字を3年間繰り越して将来の税金を減らせる
- 繰戻し還付で前年の所得税が戻ってくる可能性もある
- 住民税や国民健康保険料の軽減にもつながる
- 所得証明書の発行など、社会生活でも申告しておくと安心
赤字の年だからこそ、確定申告の「守りの力」を活用していきましょう。会計ソフトを使えば損失申告の手続きもスムーズに進められます。
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