「個人事業主って通勤費は経費にならないの?」「自宅と事務所が別の場合はどう処理すればいい?」――個人事業主の通勤にかかる交通費の扱いに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
個人事業主の通勤交通費は、自宅と事業所(事務所・店舗など)が別の場所にある場合に経費として認められます。ただし、自宅兼事務所の場合は通勤の概念がないため、原則として通勤費は発生しません。
この記事では、個人事業主の通勤交通費がどのようなケースで経費になるのか、会社員との違いも含めて詳しく解説します。

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個人事業主の通勤交通費は経費になる?基本ルール


会社員との決定的な違い
会社員の場合、通勤手当は会社が支給し、一定額まで非課税です。しかし、個人事業主には「通勤手当」という概念がありません。代わりに、事業のための移動費用を「旅費交通費」として経費計上する形になります。
経費にできるケース・できないケース
| ケース | 経費にできるか | 理由 |
|---|---|---|
| 自宅と事務所が別の場所にある | できる | 事務所への移動は事業のため |
| 自宅兼事務所で自宅から出ない | できない | 通勤が発生しない |
| 自宅兼事務所から取引先へ移動 | できる | 事業のための移動費用 |
| 自宅から趣味の場所への移動 | できない | 事業と無関係 |
個人事業主の移動費用が経費になるかどうかは「事業との関連性」がすべてです。事業に必要な移動であれば経費に、プライベートな移動であれば経費にはなりません。
自宅と事務所が別の場合の処理方法


自宅と事務所(店舗・工房・コワーキングスペースなど)が別々にある場合、自宅から事務所までの移動費用は「旅費交通費」として経費計上できます。
具体的な計上方法
- 電車・バスの場合:定期券の購入費または実費を「旅費交通費」で計上
- 車の場合:ガソリン代・駐車場代を「旅費交通費」または「車両費」で計上
- 自転車の場合:自転車の購入費やメンテナンス費は「消耗品費」で計上
車で通勤する場合のガソリン代計算
自家用車で通勤する場合、ガソリン代は以下のように計算します。
計算式:自宅〜事務所の往復距離 × 出勤日数 ÷ 燃費 × ガソリン単価
例えば、往復20km、月22日出勤、燃費15km/L、ガソリン170円/Lの場合:
20km × 22日 ÷ 15km/L × 170円 = 約4,987円/月
この金額を「旅費交通費」として毎月計上します。


自宅兼事務所の場合の交通費
自宅兼事務所で仕事をしている場合、「通勤」は発生しません。ただし、以下のような場合は交通費を経費にできます。
- 取引先への訪問・打ち合わせのための移動費
- 仕入れのための移動費
- 銀行や税務署への手続きのための移動費
- セミナー・研修への参加のための移動費
- 郵便局への配送のための移動費
これらはすべて「旅費交通費」として経費計上が可能です。
コワーキングスペースへの交通費は?
自宅とは別にコワーキングスペースやシェアオフィスを利用している場合、そこまでの交通費は事業経費として認められます。コワーキングスペースの利用料そのものも「地代家賃」として経費計上できるため、あわせて記帳しましょう。
通勤交通費を経費計上する際の注意点
注意点1:プライベートとの区分を明確にする
事業用の移動とプライベートの移動が混在する場合は、事業に関係する部分だけを経費にする必要があります。たとえば、通勤の途中で私用の買い物に寄った場合、買い物のための移動費は経費にできません。
注意点2:合理的な経路・手段を選ぶ
事務所まで電車で1,000円で行けるのに、毎回タクシーで5,000円かけていると、税務調査で合理性を疑われる可能性があります。合理的な経路と交通手段を選び、特別な手段を使う場合はその理由を記録しておきましょう。
注意点3:記録と証拠を残す
- 領収書やレシートを保管する
- ICカードの利用明細を定期的に印字する
- 移動日・目的・行先のメモを残す
- 会計ソフトの摘要欄に詳細を記入する
税務調査では「この交通費は本当に事業のためですか?」と聞かれることがあります。日付・行先・目的の3点セットを記録しておけば、自信を持って説明できます。
通勤交通費の仕訳例
電車の定期券を購入した場合
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 旅費交通費 30,000円 | 普通預金 30,000円 | 通勤定期券(○○駅〜○○駅)3か月分 |
ガソリン代を事業分だけ計上する場合
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 旅費交通費 4,987円 | 現金 4,987円 | 通勤ガソリン代(事業分按分) |
取引先訪問の電車賃
| 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|
| 旅費交通費 680円 | 現金 680円 | ○○社打ち合わせ 電車代 |


会計ソフトを活用した交通費管理


交通費の計上漏れを防ぐには、会計ソフトの活用が効果的です。
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- マネーフォワード:銀行口座・カード連携で交通費の仕訳を自動化できる
- 弥生:スマートフォンアプリからレシートを撮影して取り込める
交通費が多い個人事業主は、会計ソフトの自動連携機能を使うことで、記帳の手間を減らしながら計上漏れも防ぐことができます。
よくある質問(Q&A)
Q. 自転車通勤の場合、何を経費にできますか?
自転車本体の購入費(10万円未満なら消耗品費)、修理代、パンク修理代、自転車保険料などが経費に計上できます。事業専用の場合は全額、兼用なら按分して計上します。
Q. 徒歩圏内で通勤費がかかりません。何か損してますか?
通勤費がかからないのであれば、その分の経費は発生しないだけです。無理に経費を作る必要はありません。事務所の家賃など、他の経費をしっかり計上していれば問題ありません。
Q. 交通費の上限はありますか?
個人事業主の交通費に法的な上限はありません。ただし、事業規模や売上に対して不自然に高額な交通費は、税務調査で指摘される可能性があります。合理的な範囲で計上しましょう。
通勤交通費の家事按分の考え方
自家用車を通勤に使っている場合、プライベートでも同じ車を使うことが多いでしょう。その場合は、走行距離や使用日数に基づいて家事按分を行い、事業分だけを経費にします。
按分の具体例
月の総走行距離が1,500kmで、うち事業用(通勤+営業)が900kmの場合:
事業使用割合 = 900km ÷ 1,500km = 60%
月のガソリン代が12,000円であれば、経費にできるのは12,000円 × 60% = 7,200円です。
この按分割合を合理的に説明できるように、日々の走行距離を記録しておくことが重要です。走行日報をつけるか、車のメーターを月初・月末に記録しておきましょう。


バイク・原付の通勤費も経費にできる
バイクや原付で通勤している場合も、車と同様にガソリン代を事業経費にできます。計算方法は車の場合と同じで、事業使用割合を算出して按分します。
また、バイクの購入費用は10万円未満なら消耗品費、10万円以上なら減価償却資産として処理します。ヘルメットや駐輪場代なども事業分に応じて経費計上できます。
在宅ワーク中心でも交通費は計上できる
自宅兼事務所でリモートワークが中心の個人事業主でも、外出するたびに交通費は発生します。よくあるパターンをまとめました。
- 月1回の税理士との面談:往復の電車賃を旅費交通費として計上
- 週1回のカフェでの作業:自宅が作業環境として不十分な場合、カフェまでの交通費も計上可能
- 年数回のセミナー参加:事業に関連するセミナーへの参加費と交通費を計上
- 銀行や郵便局への手続き:事業用の口座管理や郵送手続きのための移動費
小さな金額でも積み重ねると年間で意外な額になるため、漏れなく計上する意識を持ちましょう。
経費の按分方法について詳しくは国税庁の必要経費の説明ページが参考になります。また、自宅兼事務所の家事按分についてはfreeeの家事按分ガイドもあわせて確認してみてください。
通勤ルートと交通費の記録に使えるもの
自宅と事務所を分けている場合、移動が「事業のための移動」だと説明できる記録が要になります。日付とルート、金額を残しておくだけで、家事按分の根拠としても使いやすくなります。
領収書の出ない移動が多い方は、出金伝票やレシート整理用のファイルを併用して記録を残しているケースが目立ちます。
まとめ
個人事業主の通勤交通費は、事業との関連性があれば経費にできます。
- 自宅と事務所が別の場所にある場合、通勤費は「旅費交通費」として経費にできる
- 自宅兼事務所の場合は通勤費は発生しないが、取引先への移動費は経費にできる
- 車通勤の場合はガソリン代を走行距離で按分して計上
- 記録(日付・行先・目的)をしっかり残すことが大切
- 会計ソフトの自動連携で計上漏れを防ぐ
「経費にできるのに計上していなかった」というのは個人事業主にとってもったいない話です。この記事を参考に、通勤交通費の処理を見直してみてください。
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