不動産投資で家賃収入を得ている方にとって、青色申告特別控除の65万円は節税の強い味方です。しかし、不動産所得で65万円の控除を受けるには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
この記事では、不動産所得で青色申告特別控除65万円を受けるための条件、事業的規模の判定基準、実際の申告手順までわかりやすく解説します。

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青色申告特別控除の3つの区分
青色申告特別控除には、65万円・55万円・10万円の3つの控除額があります。不動産所得で適用を受ける場合、どの金額が適用されるかは条件によって異なります。
- 65万円控除:事業的規模+複式簿記+e-Tax申告(または電子帳簿保存)
- 55万円控除:事業的規模+複式簿記(e-Tax・電子帳簿保存なし)
- 10万円控除:事業的規模でない場合、または簡易簿記の場合
つまり、不動産所得で65万円控除を受けるには「事業的規模」「複式簿記」「e-Tax」の3つの条件をすべて満たす必要があるということです。
事業的規模の判定基準(5棟10室基準)
不動産所得で青色申告特別控除の65万円を受けるためには、不動産の貸付が「事業的規模」で行われている必要があります。その判定に使われるのが「5棟10室基準」です。
事業的規模の目安
- アパート・マンションなどの貸室:おおむね10室以上
- 戸建て住宅の貸家:おおむね5棟以上
- 駐車場:明確な基準はないが、5台分でアパート1室相当とされることが多い
貸室と貸家が混在している場合は、貸室2室を貸家1棟として換算します。たとえば、貸家3棟とアパート4室を持っている場合、「3棟+4室÷2=5棟相当」となり、5棟基準を満たすと判断されます。
5棟10室はあくまで形式的な判断基準であり、実質的に事業と認められる場合は、これに満たなくても事業的規模と判断されるケースもあります。逆に、5棟10室を満たしていても実態がなければ否認されることもあります。


65万円控除を受けるための4つの条件
不動産所得で65万円の青色申告特別控除を受けるには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1:青色申告の承認を受けている
青色申告をするためには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。提出期限は、その年の3月15日まで(新規開業の場合は開業日から2か月以内)です。この手続きを済ませていなければ、白色申告しかできないため注意しましょう。
条件2:不動産の貸付が事業的規模である
前述の5棟10室基準を満たしている必要があります。事業的規模に達していない場合は、10万円の控除しか受けられません。
条件3:正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳している
65万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿付けが必須です。単式簿記(簡易簿記)では10万円控除にとどまります。複式簿記に不安がある方でも、freee、マネーフォワード、弥生などのクラウド会計ソフトを使えば、取引を入力するだけで自動的に複式簿記の帳簿が作成されるので安心です。
また、確定申告書には貸借対照表と損益計算書を添付し、申告期限内に提出する必要があります。
条件4:e-Taxで電子申告する、または電子帳簿保存をしている
55万円ではなく65万円の控除を受けるには、e-Taxによる電子申告か、電子帳簿保存法に対応した帳簿保存のどちらかが必要です。紙で確定申告書を提出した場合は55万円止まりになります。
e-Taxはマイナンバーカードとスマホ(またはICカードリーダー)があれば自宅から申告できるので、65万円控除を受けたい方はe-Taxの利用がおすすめです。


事業的規模でない場合の青色申告控除
不動産の貸付が事業的規模に達していない場合でも、青色申告を選択していれば10万円の控除は受けられます。10万円控除には、複式簿記は不要で、簡易簿記(単式簿記)でも適用されます。
事業的規模と非事業的規模の違いまとめ
| 項目 | 事業的規模 | 非事業的規模 |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 65万円(55万円) | 10万円 |
| 事業専従者給与 | 必要経費に算入可能 | 算入不可 |
| 貸倒損失 | 全額必要経費に算入 | 収入金額の範囲内 |
| 災害等による損失 | 全額必要経費に算入 | 資産損失は収入金額の範囲内 |
事業的規模のほうが税制上のメリットが大きいため、物件を増やす計画がある方は5棟10室基準を意識して資産を拡大していくのも一つの戦略です。
不動産所得の青色申告で必要な帳簿書類
不動産所得の青色申告に必要な帳簿書類は以下のとおりです。
65万円控除を受けるために必要な帳簿
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 現金出納帳(現金取引がある場合)
- 固定資産台帳
保存が必要な書類
- 不動産の賃貸借契約書
- 家賃の入金記録
- 修繕費・管理費などの領収書
- 減価償却の計算根拠
クラウド会計ソフトを使えば、仕訳帳・総勘定元帳は自動で作成されるため、手作業で帳簿をつける必要はありません。不動産収入や経費の取引を入力するだけで、申告に必要な帳簿がすべて揃います。
不動産所得で経費にできるもの
不動産所得の計算では、家賃収入から必要経費を差し引きます。経費を正しく計上することで、課税される不動産所得を圧縮できます。
- 減価償却費:建物の取得費を耐用年数にわたって経費化
- 修繕費:外壁塗装、給湯器交換、クロス張替えなど
- 管理費・管理委託料:管理会社への支払い
- 火災保険料・地震保険料:賃貸物件にかけている保険
- ローンの利息:借入金の利子部分のみ(元本は経費にならない)
- 固定資産税・都市計画税:賃貸物件にかかる税金
- 交通費:物件の管理や見回りにかかる交通費
- 通信費:入居者や管理会社との連絡にかかる費用(按分)
- 税理士報酬:確定申告の依頼費用


会計ソフトを活用した不動産の青色申告
不動産所得の複式簿記は、会計ソフトを使えば大幅に効率化できます。
- freee:銀行口座連携で家賃入金を自動取込、固定資産の減価償却も自動計算。不動産所得の確定申告書作成に対応
- マネーフォワード クラウド:不動産所得の申告に対応。複数物件の収支管理もしやすい。銀行連携の対応数が豊富
- やよいの青色申告オンライン:不動産所得の入力フォームがあり、初心者でも迷わず帳簿をつけられる。電話サポートが手厚い
いずれの会計ソフトもe-Taxでの電子申告に対応しているため、会計ソフト+e-Taxの組み合わせで65万円控除の条件を満たせます。
よくある質問(Q&A)
Q. 事業的規模に達していないが、65万円控除を受ける方法はある?
不動産所得単独で事業的規模に達していなくても、事業所得がある場合は、事業所得に対して65万円控除を適用できます。ただし、不動産所得そのものに65万円控除を適用するには、事業的規模の要件が必要です。
Q. サラリーマン大家でも青色申告できる?
はい、会社員でも不動産所得がある場合は青色申告が可能です。給与所得と不動産所得は別々に計算し、確定申告で合算して申告します。青色申告承認申請書を提出し、複式簿記で帳簿をつけてe-Taxで申告すれば65万円控除が受けられます。
Q. 空室が出て10室を下回ったらどうなる?
空室期間があっても、すぐに事業的規模でなくなるわけではありません。速やかに入居者の募集を行っているなど、賃貸の意思が認められる場合は空室でも室数にカウントされます。ただし、長期間にわたって募集もせずに放置している場合は、室数から除外される可能性があります。
Q. 不動産所得が赤字の場合はどうなる?
不動産所得が赤字の場合、原則として他の所得(給与所得など)と損益通算ができます。ただし、土地の取得に要した借入金の利子部分は損益通算の対象外です。青色申告をしていれば、通算しきれなかった損失を3年間繰り越すことも可能です。
Q. 令和9年分(2027年分)から75万円控除になると聞いたが?
令和9年分以後の確定申告から、e-Tax申告と優良な電子帳簿保存の両方の要件を満たす場合、青色申告特別控除の上限が75万円に引き上げられる予定です。ただし、65万円控除の条件に加えて「優良な電子帳簿」の要件が必要となるため、詳細は今後の情報を確認しましょう。
青色申告の準備を進めるときに手元にあるもの
複式簿記での記帳や事業的規模の判定は、不動産所得ならではの論点です。一般的な青色申告の入門書では触れられていない部分もあるため、不動産所得に絞った解説書を1冊置いておくと、判断に迷った箇所を確認しながら進められます。制度は年度ごとに扱いが変わるので、対応年度を確かめたうえで選んでください。
また、上で挙げた帳簿書類は保存期間が長く、物件が増えるほど紙の量も増えていきます。物件ごとにファイルボックスを立てて分けておけば、決算のときに必要な書類だけを取り出せます。A4サイズが入るものを選んでおくと、契約書も納税通知書もそのまま収まります。
まとめ
不動産所得で65万円の青色申告特別控除を受けるには、「事業的規模(5棟10室基準)」「複式簿記による記帳」「e-Tax申告または電子帳簿保存」の3つの条件を満たす必要があります。
事業的規模に達していない場合でも、10万円の控除は受けられます。物件を増やして事業的規模を目指しつつ、クラウド会計ソフトを活用して帳簿管理を効率化していきましょう。
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