「消費税の申告って、自分は対象なの?」「計算方法がよくわからない」――インボイス制度の導入以降、新たに課税事業者になった個人事業主・フリーランスの方にとって、消費税の申告は大きな関心事です。
消費税の申告とは、事業で受け取った消費税と支払った消費税の差額を税務署に申告・納税する手続きです。課税事業者に該当する場合は、所得税や法人税の確定申告とは別に、消費税の申告が必要になります。
この記事では、消費税申告の対象者、計算方法(本則課税・簡易課税・2割特例)、申告期限、届出の手順までを解説します。

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消費税の申告が必要な人(課税事業者の判定)
消費税の申告が必要なのは「課税事業者」です。以下のいずれかに該当する場合、課税事業者となります。
- 基準期間(個人:前々年、法人:前々事業年度)の課税売上高が1,000万円超
- 特定期間(個人:前年1月〜6月、法人:前事業年度の前半6か月)の課税売上高が1,000万円超かつ給与支払額が1,000万円超
- インボイス発行事業者として登録している(売上規模に関係なく課税事業者)
- 「消費税課税事業者選択届出書」を提出している
インボイス制度の開始により、免税事業者から自ら課税事業者を選択した方は、消費税の申告が新たに必要になっています。
消費税の3つの計算方法
1. 本則課税(一般課税)
売上に含まれる消費税額から、仕入・経費に含まれる消費税額を差し引いて計算する方法です。正確に計算できますが、すべての取引で消費税区分を把握する必要があるため、経理の手間がかかります。インボイス制度下では、仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要です。
計算式:納付税額 = 売上の消費税額 − 仕入・経費の消費税額
2. 簡易課税
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる制度です。業種ごとに定められた「みなし仕入率」を使って消費税額を計算します。
- 第一種事業(卸売業):みなし仕入率90%
- 第二種事業(小売業):みなし仕入率80%
- 第三種事業(製造業等):みなし仕入率70%
- 第四種事業(飲食業等):みなし仕入率60%
- 第五種事業(サービス業等):みなし仕入率50%
- 第六種事業(不動産業):みなし仕入率40%
実際の仕入額を集計する必要がないため、経理の負担が大幅に軽減されるのがメリットです。ただし、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出する必要があります。適用したい課税期間の前日までに提出が必要です。
3. 2割特例
インボイス制度の導入によって新たに課税事業者になった方向けの時限的な負担軽減措置です。納付税額が売上の消費税額の2割で済みます。
計算式:納付税額 = 売上の消費税額 × 20%
2割特例の適用期限は、個人事業主の場合は記事執筆時点で対象年分の確定申告まで、法人の場合は適用対象の課税期間が属する事業年度までです。特例終了後は本則課税か簡易課税のいずれかを選択する必要があるため、早めに準備しておきましょう。簡易課税を選択する場合の届出には期限があります。最新の期限は国税庁のサイトで確認してください。

消費税の申告期限と届出
申告期限
- 個人事業主:翌年3月31日まで(所得税の3月15日とは異なるので注意)
- 法人:事業年度終了日の翌日から2か月以内
届出が必要なケース
- 簡易課税を選択する場合:「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用したい課税期間の前日までに提出
- 課税事業者を選択する場合:「消費税課税事業者選択届出書」を提出
- インボイス発行事業者の登録:「適格請求書発行事業者の登録申請書」をe-Taxまたは書面で提出
消費税申告の具体的な手順
手順1:課税売上・課税仕入を集計する
まず、事業年度(個人は暦年)の課税売上高と課税仕入高を集計します。会計ソフトで消費税区分を正しく設定していれば、自動で集計されます。税率の異なる取引(10%と8%)が混在している場合は、それぞれ分けて集計する必要があります。
手順2:計算方法に応じて税額を算出する
本則課税なら「売上消費税 − 仕入消費税」、簡易課税なら「売上消費税 ×(1 − みなし仕入率)」、2割特例なら「売上消費税 × 20%」で計算します。どの方法が有利かは、事業の経費構造によって異なります。
手順3:申告書を作成して提出する
消費税申告書(一般用または簡易課税用)を作成し、e-Taxで電子申告するか、税務署に書面提出します。会計ソフトの多くは消費税申告書の作成機能を備えているため、活用しましょう。
手順4:納税する
申告期限までに納税します。振替納税やダイレクト納付、クレジットカード納付など、複数の納付方法から選べます。中間納付が必要な場合もあるため、前期の納税額を確認しておきましょう。

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よくある質問(Q&A)
Q. 消費税の還付は受けられる?
本則課税を選択している場合、仕入・設備投資にかかった消費税額が売上の消費税額を上回れば還付を受けられます。簡易課税や2割特例では還付は発生しません。大規模な設備投資を行う年は、本則課税のほうが有利な場合があります。
Q. 簡易課税と本則課税、どちらがお得?
仕入や経費が少ない業種(サービス業、コンサルタントなど)は簡易課税のほうが有利なケースが多いです。一方、設備投資が大きい年や仕入比率が高い業種は本則課税のほうが得な場合もあります。一度選択すると2年間は変更できないため、慎重に検討しましょう。
Q. 免税事業者に戻ることはできる?
インボイス発行事業者の登録を取り下げることで、免税事業者に戻ることは可能です。ただし、取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、売上への影響を十分に考慮する必要があります。
Q. 消費税の申告に会計ソフトは必要?
必須ではありませんが、会計ソフトを使えば消費税区分の集計から申告書の作成まで自動化できるため、経理の負担が大幅に減ります。freee、マネーフォワード クラウド、弥生のいずれも消費税申告に対応しています。
消費税の計算方法の選び方のコツ
3つの計算方法があるとなると、「結局どれを選べばいいの?」と迷う方も多いです。選び方のポイントを整理しておきます。
売上が小さい&経費も少ない場合
フリーランスのライターやコンサルタントなど、仕入がほとんどなく人件費(自分の労働)が中心の業種は、簡易課税か2割特例が有利です。本則課税だと控除できる仕入消費税が少なく、納税額が大きくなる傾向があります。
設備投資が大きい年がある場合
事業用の車両購入や高額な機材の導入など、大きな設備投資がある年は本則課税のほうが有利になる場合があります。仕入消費税が売上消費税を上回れば、還付を受けられるからです。ただし、簡易課税を選択すると2年間は変更できないため、事前にシミュレーションしておくことが大切です。
判断に迷ったらシミュレーションを
freee・マネーフォワード・弥生のいずれの会計ソフトでも、本則課税と簡易課税の税額をシミュレーションできる機能があります。直近の取引データをもとに試算して、どちらが納税額を抑えられるか比較してから届出を出すのがおすすめです。
Q. 中間納付とは何ですか?
前年の消費税の年税額が48万円を超えると、翌年に中間納付(予定納税)が必要になります。年税額に応じて年1回・3回・11回と回数が変わります。中間納付の金額は前年実績をもとに計算される「予定納税方式」か、仮決算に基づく「仮決算方式」のいずれかを選択できます。資金繰りへの影響が大きいため、対象になりそうな方は事前に把握しておきましょう。
Q. 消費税の経理処理方式(税込・税抜)はどちらがいい?
会計ソフトでは「税込経理方式」と「税抜経理方式」を選べます。税込経理方式は処理がシンプルですが、損益への消費税の影響が見えにくいデメリットがあります。税抜経理方式は本来の売上・経費の金額がわかりやすく、経営判断に役立ちます。一般的には、課税事業者は税抜経理方式を選ぶほうが管理しやすいとされています。
まとめ
消費税の申告は、課税事業者に該当する場合に必要な手続きです。計算方法には本則課税・簡易課税・2割特例の3つがあり、事業の特性に応じて選択できます。
インボイス制度で新たに課税事業者になった方は、2割特例の適用期限を見据えて、次の計算方法への移行を早めに検討しましょう。会計ソフトの消費税申告機能を活用すれば、計算から申告書の作成までスムーズに進められます。
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