インボイス制度がスタートしてから、「免税事業者からの仕入れはどう仕訳すればいいの?」「経過措置の80%控除ってどう計算するの?」と悩む方が増えています。
インボイス制度のもとでは、取引先がインボイス発行事業者かどうかで消費税の仕訳方法が変わります。正しく処理しないと消費税の申告額を間違えてしまうため、仕訳の基本をしっかり押さえておくことが大切です。
この記事では、インボイスありの場合・なしの場合・経過措置適用の場合、それぞれの具体的な仕訳例を交えながら、処理方法をわかりやすく解説します。

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インボイス制度における仕訳の基本


従来の消費税の仕訳方法(税込経理・税抜経理)
消費税の経理方法には「税込経理方式」と「税抜経理方式」の2つがあります。
- 税込経理方式:消費税を含めた金額で仕訳を行い、決算時に「租税公課」として消費税を処理する
- 税抜経理方式:取引ごとに消費税を「仮払消費税」「仮受消費税」として分けて仕訳する
インボイス制度においても、この2つの経理方式は引き続き使用できます。ただし、仕入税額控除ができない部分の処理が新たに加わる点が異なります。
インボイスの有無で何が変わるか
インボイス制度の最大のポイントは、適格請求書(インボイス)がなければ仕入税額控除ができないということです。つまり、免税事業者など登録していない取引先からの仕入れでは、消費税を差し引けなくなります。
ただし、経過措置が設けられており、一定割合の控除が認められています。
パターン別の仕訳例
パターン1:インボイスありの場合(通常の仕訳)
適格請求書発行事業者からの仕入れでインボイスを受領した場合は、従来通り全額の仕入税額控除が可能です。
【仕訳例】税抜経理方式で、インボイスあり事業者から11,000円(税込)の商品を仕入れた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 10,000円 | 買掛金 | 11,000円 |
| 仮払消費税等 | 1,000円 |
この場合、仮払消費税等1,000円は全額が仕入税額控除の対象になります。
パターン2:インボイスなし・経過措置適用の場合
免税事業者からの仕入れでインボイスがない場合でも、経過措置により一定割合の仕入税額控除が認められています(freee 経過措置の解説)。
- 2023年10月〜2026年9月:80%控除可能
- 2026年10月〜2029年9月:50%控除可能
- 2029年10月以降:控除不可
【仕訳例】税抜経理方式で、免税事業者から11,000円(税込)の商品を仕入れた場合(80%控除期間)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 10,000円 | 買掛金 | 11,000円 |
| 仮払消費税等 | 1,000円 |
仕訳自体はインボイスありの場合と同じですが、申告時に控除できるのは1,000円×80%=800円のみです。残りの200円は控除対象外となり、税込経理方式では「雑損失」、税抜経理方式では決算整理で「雑損失」に振り替えます。
【決算整理仕訳(税抜経理方式)】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 雑損失 | 200円 | 仮払消費税等 | 200円 |


パターン3:インボイスなし・経過措置なしの場合
2029年10月以降(経過措置終了後)は、インボイスのない仕入れでは仕入税額控除が一切できなくなります。
【仕訳例】税込経理方式で、免税事業者から11,000円(税込)の商品を仕入れた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入高 | 11,000円 | 買掛金 | 11,000円 |
消費税の仕入税額控除ができないため、消費税込みの金額がそのまま仕入原価になります。
帳簿の記載要件


インボイスありの場合の帳簿記載事項
通常のインボイス取引では、帳簿に以下の事項を記載する必要があります。
- 取引先の名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨)
- 税率ごとに区分した対価の額
経過措置を適用する場合の帳簿記載事項
経過措置の適用を受ける場合は、上記に加えて「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を帳簿に記載する必要があります。具体的には「80%控除対象」などの文言を記載します。
帳簿への記載を忘れると、経過措置の適用が認められない可能性があります。クラウド会計ソフトでは取引先ごとにインボイス発行事業者かどうかを設定でき、自動で適切な消費税区分を付与してくれる機能があるため、積極的に活用しましょう。
会計ソフトでのインボイス仕訳設定


freeeの場合
freeeでは取引先の登録時に「適格請求書発行事業者」のフラグを設定できます。自動仕訳のルールで取引先ごとに消費税区分を自動判定してくれるため、日常の仕訳入力で特別な操作は不要です。
マネーフォワードクラウドの場合
マネーフォワードクラウドでも、取引先マスタにインボイス登録番号を登録でき、仕訳入力時に自動で消費税区分が切り替わります。経過措置の控除割合も自動で計算されるため、手動での調整は不要です。
弥生会計の場合
弥生会計オンラインでは、免税事業者からの仕入れに対して「経過措置(80%)」「経過措置(50%)」の消費税区分が用意されています。該当する区分を選択するだけで、正しい控除額が自動計算されます。
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よくある質問(Q&A)
Q. 少額特例(1万円未満の取引)ではインボイスは不要ですか?
はい、基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存がなくても仕入税額控除が可能です。この少額特例は2029年9月30日までの経過措置です。
Q. 経過措置の80%と50%はいつ切り替わりますか?
2026年10月1日から50%控除に切り替わります。2026年9月30日までの取引は80%控除、10月1日以降の取引は50%控除が適用されます。取引日ベースで判定するため、月をまたぐ取引には注意してください。
Q. 簡易課税制度を選択している場合もインボイスの保存は必要ですか?
簡易課税制度を選択している場合は、みなし仕入率で消費税を計算するため、仕入先のインボイスの有無は納税額に影響しません。ただし、売上側でインボイスを発行する義務はあるため、適格請求書の発行・保存は必要です。
Q. 免税事業者に消費税相当額を支払った場合の仕訳は?
免税事業者からの請求書に消費税相当額が含まれている場合でも、仕入税額控除ができない(または経過措置の範囲内でしか控除できない)ため、控除対象外の消費税分は原価や雑損失として処理します。税込経理方式であれば、税込金額をそのまま仕入高に計上します。
2026年10月以降の仕訳の変更点
2026年10月1日からは経過措置の控除割合が80%から50%に引き下げられます。これにより、免税事業者からの仕入れにかかる控除対象外の消費税が増加し、雑損失として処理する金額も大きくなります。
たとえば、免税事業者からの税込11,000円の仕入れの場合、80%控除期間は200円が雑損失でしたが、50%控除期間では500円が雑損失になります。仕入先の多くが免税事業者である場合、年間のコスト増加はかなりの金額になる可能性があります。
この負担増加を踏まえて、取引先にインボイスの登録を依頼するか、あるいは仕入先の見直しを検討することも選択肢の一つです。
Q. 税込経理方式と税抜経理方式、どちらが有利ですか?
消費税の経理方式による損得の差はありません。ただし、税抜経理方式のほうが仕入税額控除の金額を取引ごとに把握しやすく、インボイス制度下では管理がしやすいとされています。クラウド会計ソフトでは税抜経理方式を推奨しているケースが多いです。
Q. インボイスの保存期間はどのくらいですか?
受領したインボイスは原則として7年間の保存が必要です。電子データで受領した場合は、電子帳簿保存法に準拠した方法で電子保存することが求められます。クラウド会計ソフトの多くは電子帳簿保存法にも対応しているため、ソフト上で保管すれば要件を満たせることが多いです。
7年保存のインボイスと、経過措置を読み直すための一冊
直前のQ&Aで触れたとおり、受領したインボイスは原則7年間の保存が必要です。電子で受け取ったものはソフト上で完結しますが、紙で届く請求書や領収書は結局どこかに置いておくことになります。
年度ごとに分けられる領収書ファイルを用意して「その年の紙はここだけ」と決めておくと、7年分をさかのぼる必要が出たときに探しやすくなります。月別インデックス付きのタイプを選ぶ人が多いようです。
また、経過措置の割合や税抜・税込経理の考え方は、都度ネットで調べるより手元の一冊で確認したほうが早い場面もあります。インボイス制度の解説書は改訂が重なっているので、購入時は対応年度を商品ページで確認してみてください。
まとめ
インボイス制度のもとでの消費税仕訳は、取引先がインボイス発行事業者かどうかで処理が変わります。インボイスありなら全額控除、経過措置期間中は80%(または50%)控除、経過措置終了後は控除不可というのが基本パターンです。
クラウド会計ソフトを活用すれば、取引先の設定を一度行うだけで日々の仕訳は自動化できます。消費税の処理に不安がある方は、まずは会計ソフトの設定を見直すところから始めてみてください。
参考: 国税庁 経過措置の概要
参考: バクラク インボイス制度の経過措置における80%控除とは
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