「補助金を受け取ったけど、帳簿にはどう書けばいいの?」「補助金って税金がかかるの?」――補助金を活用した個人事業主が最初にぶつかるのが、この経理処理の壁です。
補助金・助成金は「もらったお金」であっても、原則として課税対象の収入として扱われます。正しく経理処理をしないと、確定申告でトラブルになったり、税務調査で指摘を受けたりする可能性があります。
補助金の仕訳方法と税務上の取り扱いを正しく理解しておくことが、スムーズな確定申告への第一歩です。この記事では、個人事業主向けに補助金の経理処理と仕訳方法をわかりやすく解説します。

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補助金・助成金の基本知識
補助金と助成金の違い
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な交付元 | 経済産業省・中小企業庁など | 厚生労働省など |
| 審査の有無 | 審査あり(採択率あり) | 要件を満たせば原則受給可能 |
| 主な目的 | 事業拡大・設備投資の支援 | 雇用維持・能力開発の支援 |
| 代表例 | ものづくり補助金、IT導入補助金など | キャリアアップ助成金など |
経理処理の面では、補助金も助成金も基本的に同じ会計処理を行います。
補助金は課税対象
補助金・助成金は、個人事業主の場合「事業所得の総収入金額」に算入されます。つまり、所得税の課税対象です。消費税については不課税取引となるため、消費税の計算には含めません(小谷野税理士法人 補助金の勘定科目と仕訳)。


補助金の基本的な仕訳方法


補助金の入金時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 500,000 | 雑収入 | 500,000 | IT導入補助金 入金 |
補助金の勘定科目は「雑収入」を使うのが一般的です。確定申告書の「雑収入」欄に記載するのが通常の処理です。
補助金で設備を購入したときの仕訳
補助金を使ってパソコン(40万円)を購入した場合の仕訳です。
パソコン購入時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 400,000 | 普通預金 | 400,000 | パソコン購入(補助金対象) |
補助金入金時(補助率1/2の場合)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 200,000 | 雑収入 | 200,000 | IT導入補助金 入金 |
経費に使った補助金の仕訳
補助金で広告宣伝費(30万円)を支出した場合、広告費の支払いは通常の経費仕訳、補助金の入金は雑収入として処理します。購入と補助金入金はそれぞれ独立した仕訳として切ります。


総収入金額不算入の特例(個人事業主版の圧縮記帳)
制度の概要
法人には「圧縮記帳」という制度がありますが、個人事業主の所得税法には「圧縮記帳」という名称の制度はありません。代わりに、所得税法第42条に「国庫補助金等の総収入金額不算入」という特例が設けられています。
この特例を使うと、国や地方公共団体から受け取った補助金で固定資産を取得した場合、補助金相当額を総収入金額に算入しないことが可能です。結果として、補助金を受け取った年の所得税負担を抑えることができます(マネーフォワード 個人事業主の圧縮記帳)。
適用要件
- 国または地方公共団体からの補助金であること
- その補助金で固定資産を取得または改良したこと
- 補助金の返還不要が確定していること
- 確定申告書に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付すること
総収入金額不算入の特例は、あくまで「固定資産の取得」に使った補助金が対象です。経費(消耗品費や広告費など)に使った補助金には適用できません。また、確定申告時に所定の明細書を添付する必要があります。適用を検討する場合は、税理士に相談することをおすすめします。
補助金の経理処理で注意すべきポイント


入金時期と費用計上時期のズレ
補助金は「先に経費を支出し、後から補助金が入金される」という流れが一般的です。経費の計上時期と補助金の入金時期がずれることがあるため、それぞれ発生した時点で正しく仕訳する必要があります。12月に設備を購入し、翌年2月に補助金が入金された場合は、設備購入は12月、補助金収入は翌年2月の雑収入として処理します。
消費税の取り扱い
補助金・助成金の受取は消費税の「不課税取引」です。消費税の申告では課税売上に含めません。一方、補助金で購入した経費の消費税は「課税仕入れ」として仕入税額控除の対象になります(課税事業者の場合)。
返還の可能性に備える
補助金には「返還条件」が付いている場合があります。補助金で購入した設備を一定期間内に処分した場合などは、補助金の返還を求められることがあります。返還が生じた場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 雑損失 | 200,000 | 普通預金 | 200,000 | IT導入補助金 返還 |
補助金の種類別・仕訳のポイント
IT導入補助金の場合
IT導入補助金は、会計ソフトやECシステムなどのITツール導入を支援する補助金です。補助率は1/2〜2/3が一般的です。ITツールはソフトウェアとして「無形固定資産」に計上するか、利用料型であれば「通信費」や「支払手数料」として経費計上します。クラウド型のサブスクリプション料金の場合は、利用月ごとに経費として処理するのが一般的です。
小規模事業者持続化補助金の場合
小規模事業者持続化補助金は、チラシ作成やWeb広告、展示会出展などの販路開拓に使える補助金です。補助率は2/3で、補助上限は通常枠で50万円です。この補助金で支出した費用は「広告宣伝費」「販売促進費」「外注費」などの経費科目で処理します。経費に使った補助金には「総収入金額不算入の特例」は適用できない点に注意しましょう。
ものづくり補助金の場合
ものづくり補助金は、設備投資やシステム構築に使える補助金です。設備を購入した場合は固定資産として計上し、減価償却を行います。この場合は「総収入金額不算入の特例」の適用が検討できます。適用する場合は確定申告時に明細書の添付が必要です。
補助金の申請から確定申告までの流れ


- 申請・採択:補助金に応募し、採択通知を受ける
- 事業実施:採択後、補助対象の経費を支出する(先に自腹で支払う)
- 実績報告:支出の証拠書類をまとめて事務局に報告する
- 補助金入金:審査後、補助金が口座に振り込まれる
- 帳簿記帳:経費支出時と補助金入金時にそれぞれ仕訳を切る
- 確定申告:補助金を雑収入として申告。特例適用の場合は明細書を添付
補助金は「後払い」が基本のため、事業資金の立替が発生します。資金繰りに余裕がない場合は、つなぎ融資の利用も検討しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 補助金と助成金で仕訳方法は変わりますか?
基本的には同じです。どちらも受け取った時点で「雑収入」として計上します。
Q. 補助金をもらっても確定申告しないとバレますか?
補助金の交付元(国・自治体)から税務署に支払情報が通知されるため、申告漏れは把握されやすい状況です。意図的に申告しなければ、無申告加算税や延滞税のペナルティが科される可能性があります。
Q. 補助金で購入した固定資産の減価償却はどうなりますか?
通常どおり減価償却を行います。ただし「総収入金額不算入の特例」を適用した場合は、固定資産の取得価額を補助金分だけ減額するため、減価償却費の計算ベースが小さくなります。
Q. 個人事業主がよく使う補助金にはどんなものがありますか?
代表的なものとして、IT導入補助金(ITツール・ソフトウェア導入)、小規模事業者持続化補助金(販路開拓・業務効率化)、ものづくり補助金(設備投資)などがあります。いずれも要件や補助率が異なるため、公式サイトで最新情報を確認してください。
Q. 補助金の申請費用(コンサルタント報酬など)は経費になりますか?
補助金の申請手続きを専門家に依頼した場合の報酬は、「支払手数料」や「外注費」として経費計上できます。ただし、成功報酬型の場合は補助金が入金されたタイミングで費用計上するのが一般的です。


仕訳の判断と書類の保管に備える
補助金は「雑収入」で処理するのが基本ですが、圧縮記帳や固定資産がからむと、どの科目を使うか迷う場面が出てきます。勘定科目の事典を1冊置いておくと、似たケースを引きながら判断できるので、そのつど調べ直す手間が減ります。
補助金は交付決定通知書・実績報告書・支払通知など、案件ごとに書類がひとまとまりで残ります。あとから提出を求められることもあるため、案件ごとに収納ボックスへ分けて保管しておくと、必要なときにすぐ取り出せます。
まとめ
- 補助金・助成金は原則として課税対象の収入(消費税は不課税)
- 勘定科目は「雑収入」で処理するのが一般的
- 固定資産の取得に使った場合は「総収入金額不算入の特例」の適用を検討
- 経費計上時期と補助金入金時期のズレに注意する
- 確定申告での記載漏れは把握されやすいため、正しく申告すること
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